著者
高野 順平
出版者
大阪府立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、シロイヌナズナにおいてSPOT1/KNS3と呼ばれる機能未知タンパク質がホウ酸チャネルのカーゴレセプターとして小胞体から細胞膜への細胞内輸送の初期段階を制御することを証明することを目的としている。本研究の端緒は、GFPタグしたホウ酸チャネルGFP-NIP5;1が根の表皮細胞において小胞体にとどまる変異株を単離し、その原因遺伝子をSPOT1/KNS3と同定したことにある。SPOT1/KNS3の変異株は花粉の外壁構造に異常を持つことがすでに知られていたため、SPOT1/KNS3の膜タンパク質輸送機能は花粉の発達にも寄与すると考えられる。平成28年度までにspot1/kns3変異株の根の表皮細胞において様々な膜タンパク質の局在を解析したところ、ホウ酸チャネルのみが小胞体にとどまることが明らかになっていた。平成29年度はタバコ葉における一過的発現系を用いて細胞内局在解析を進め、SPOT1/KNS3は小胞体膜とゴルジ体膜に局在することを明らかにした。以上から、SPOT1/KNS3はホウ酸チャネル特異的に小胞体からゴルジ体への輸送を助けるカーゴレセプターである可能性が高まった。平成29年度には、NIP7;1-GFP発現形質転換シロイヌナズナを作出し、ホウ酸チャネルNIP7;1は葯のタペート細胞の細胞膜に局在することを示した。NIP7;1は葯室にホウ酸を供給して花粉の発達に貢献する可能性が高い。H30年度はspot1/kns3変異株のタペート細胞におけるNIP7;1の局在と、ホウ酸チャネルとSPOT1/KNS3の相互作用に焦点をあてて解析を進める。