著者
高阪 悌雄
出版者
松山東雲女子大学人文科学部紀要委員会
雑誌
松山東雲女子大学人文科学部紀要 (ISSN:2185808X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.55-68, 2010-03

本稿ではSenの言う潜在能力の拡がりを保障していく社会とは,市民参加型の民主主義社会であり,それを支えるものは民の公共活動であることについて論じた。また、民主主義社会を支える"民の公共","私的領域","政府"の役割が,どう違うのかを明確にしていくため,公共哲学の成立の経緯を振り,その上で"民の公共"の承認の上に"政府"が成立し,承認された"政府"が"私的領域"から税を徴収し,その使途を"民の公共"がチェックするという山脇が述べるそれぞれの関係性について明確にしていった。さらに今後の日本の社会を支える"民の公共"活動を支える供給主体や財源等について,Kramerの研究を参照しながら,ヨーロッパと日本の比較を行った。そうした比較の中で,今後日本に求められている"民の公共"のモデルとは,ボランティアセクターをインフォーマルなものとしてではなく,非営利組織として捉えていくことや,非営利組織への財源を公費で保障していくことの必要性などを説いた。
著者
高阪 悌雄
出版者
松山東雲女子大学人文科学部紀要委員会
雑誌
松山東雲女子大学人文科学部紀要 = Annual bulletin of the Faculty of Human Sciences, Matsuyama Shinonome College (ISSN:2185808X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.77-83, 2013-03

福祉六法をはじめとした社会福祉の個別法では、ケースによっては、深刻な生活ニーズを持つ人に対応できないといった排除性の問題を抱える。 こうした問題を克服していく考え方にベーシック・インカムがある。 しかし、全国民一律に金銭給付が行われるベーシック・インカムの下では、個別の法律は不要となる。 筆者はこうした考え方に異を唱え、福祉関係六法をはじめとしたそれぞれの個別法を改善していくことの方が、多様な福祉需用者のねがいに対応できる可能性が拡がることを説いた。 その上で、社会福祉の個別法の一つである身体障害者福祉法と国民年金法の障害等級法の問題点及び改善点を指摘した。 特に医学モデルに基づいた数値化された診断基準をもとに年金給付を決定している現行の仕組みではなく、就業所得の不足分を保障していく仕組みに変えていくことの大切さを説いた。