著者
高須 裕彦
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.51-63, 2010-06-25

本稿の課題は,日本の労働組合運動の新たな動きをアメリカの社会運動ユニオニズムと比較し,日本における社会運動ユニオニズムの可能性について論ずることである。まず,アメリカの社会運動ユニオニズムのモデルを示す。それを現在の日本の労働運動と比較し,日本の労働運動のどこに社会運動ユニオニズムの可能性があるのかを議論する。「年越し派遣村」や「反貧困ネットワーク」は,労働運動と社会運動の結節点としての「場」になっていること,草の根のユニオンは労働相談を出発点にネットワークを形成し,派遣切りにあった労働者の深刻な現実に向き合うなかで,派遣村に合流していること,連合は地域労働運動の強化と非正規労働問題への取り組みを進めながら,地域の社会運動やNPOなどとの連携を模索し,「全国ユニオン」の要請を受けて派遣村に参加したこと,これらの運動に今後,社会運動ユニオニズムとして発展していく可能性があることを論じる。