著者
河瀬 彰宏 髙木 優貴
出版者
日本デジタル・ヒューマニティーズ学会
雑誌
デジタル・ヒューマニティーズ (ISSN:21897867)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.3, 2020-11-20 (Released:2020-11-20)
参考文献数
25

日本の伝統音楽の基盤であるわらべうたは,子どもが遊びの中で創作した自然発生的な音楽である.わらべうたと類似した音楽に童謡がある.両者の音楽は子どもに親しまれているが,童謡は大人が子どもに親しんでもらう明確な意図のもとで作曲された音楽という点でわらべうたと異なる.本研究では,子どもたちが自然な感覚で創作したわらべうたの旋律的特徴のことを「子どもらしさ」と定義し,童謡の旋律がもつ「子どもらしさ」の表現方法を計量的に明らかにした.わらべうた,童謡,同時代の日本の流行歌の旋律から音程と音価を抽出し,それらを特徴量とする計量比較を実施した.3者の共通点と相違点を明確に説明する特徴量を考察することで,童謡の旋律がもつ「子どもらしさ」が限定された範囲内での音程推移と跳躍のあるリズムの組み合わせによって作られていることが明らかになった.