著者
村田 祐菜 永崎 研宣 大向 一輝
出版者
日本デジタル・ヒューマニティーズ学会
雑誌
デジタル・ヒューマニティーズ (ISSN:21897867)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.17-26, 2022-12-31 (Released:2022-12-31)
参考文献数
27

文学研究をはじめとした諸分野において, 一定規模のテキストを素早く, 網羅的に検索可能な環境が整備されていることは研究基盤の点から重要である.しかし,近代短歌は研究に利用可能な電子テキストの蓄積が十分ではない.また,日本文学研究者はプログラミング技術等を用いたテキストの処理・分析手法をとる場合はいまだ少なく,テキストの構築に加え,データの利用環境としての検索・分析インターフェースの整備も必要である.そこで研究データとしての近代短歌の電子テキストの作成及びその利用環境としての全文検索システムを構築し,「近代短歌データベース」として公開した.本稿ではその構築過程と実現した機能の詳細,近代短歌研究における利用事例について述べる.
著者
岡田 一祐
出版者
日本デジタル・ヒューマニティーズ学会
雑誌
デジタル・ヒューマニティーズ (ISSN:21897867)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.26, 2020-11-20 (Released:2020-11-20)
参考文献数
11
被引用文献数
32

TEIをもとにした日本古辞書の効率的な符号化モデルについて論ずる。日本の古辞書(1615年以前の日本編纂辞書)、具体的には平安時代の漢字字書を本稿では例とする。古辞書はしばしば構造を見いだしがたく資料として利用しにくい。そのような懸隔を構造注記によって補いたい。また、これらの資料を共通のモデルで符号化することで、資料間の構造差が見いだしやすくなることが期待される。ここで用いるスキーマは、TEI(Text Encoding Initiative)で、国際的に用いられている本文符号化の取り決めである。さまざまな符号化の考え方を包摂し、そのなかには辞書や語彙データベースに関するものもある。TEIは現状東アジアの古典的辞書への適用が十分に検討されているわけではないので、符号化に際しては考慮すべきことが多い。本稿では、古辞書に見られるさまざまな要素をどのように符号化することが情報交換において望ましいか論ずる。
著者
中村 覚 大和 裕幸 稗方 和夫 満行 泰河
出版者
日本デジタル・ヒューマニティーズ学会
雑誌
デジタル・ヒューマニティーズ (ISSN:21897867)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.29-43, 2018 (Released:2019-01-18)
参考文献数
25

近年,デジタルアーカイブの普及に伴い,セマンティックウェブ技術を活用したデジタルアーカイブの統合や,年表や地図等との組み合わせによる多角的な情報提供による史料研究支援が試みられている.このような取り組みは効率的な史料研究を支援する点で重要であるが,これらはデジタルアーカイブを公開する提供者による取り組みが主である.歴史研究者をはじめとする史料の利用者が,公開されている史料を収集・整理し,史料分析を支援する環境は整えられていない.本研究では,SPARQL Endpoint を提供するデジタルアーカイブが公開する情報と,研究者が個々に整理する情報を Linked Data を用いて関連づけ, 研究者の目的に応じた史料分析を支援するシステムを開発する.また,異なる 2 つのデータベースを対象としたケーススタディを行い,提案手法の有用性を検証する.
著者
河瀬 彰宏 髙木 優貴
出版者
日本デジタル・ヒューマニティーズ学会
雑誌
デジタル・ヒューマニティーズ (ISSN:21897867)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.3, 2020-11-20 (Released:2020-11-20)
参考文献数
25

日本の伝統音楽の基盤であるわらべうたは,子どもが遊びの中で創作した自然発生的な音楽である.わらべうたと類似した音楽に童謡がある.両者の音楽は子どもに親しまれているが,童謡は大人が子どもに親しんでもらう明確な意図のもとで作曲された音楽という点でわらべうたと異なる.本研究では,子どもたちが自然な感覚で創作したわらべうたの旋律的特徴のことを「子どもらしさ」と定義し,童謡の旋律がもつ「子どもらしさ」の表現方法を計量的に明らかにした.わらべうた,童謡,同時代の日本の流行歌の旋律から音程と音価を抽出し,それらを特徴量とする計量比較を実施した.3者の共通点と相違点を明確に説明する特徴量を考察することで,童謡の旋律がもつ「子どもらしさ」が限定された範囲内での音程推移と跳躍のあるリズムの組み合わせによって作られていることが明らかになった.