著者
髙本 眞一
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.259-264, 2022-09-15 (Released:2022-10-04)
参考文献数
7

患者中心の医療は1969年にロンドンのBalint E. から初めて報告されたが,その後1980年代から広く世界に拡がってきた.本邦の厚生労働省は医療法第6条10にて病院の管理者が病院の医療で死亡があった場合医療事故と判断したら,医療事故調査・支援センターにて問題点を分析して理想的な医療状態を考慮してもらい,医療の質の向上を願っている.しかし,ある病院で心臓血管外科において70歳代の男性に僧帽弁手術が行われたが,術直後に心不全となり大学病院で治療されたが,2カ月後に亡くなり,剖検にて心筋の後壁,中壁が壊死となり,前壁だけが正常であった.このことに関して病院の管理者は医療の問題はなく,医療事故ではないと判断し,医療事故調査・支援センターでの分析を拒否した.しかし,患者の家族が病院から受けた資料を筆者に検討させると,僧帽弁手術の問題点は心筋に大量に空気が張り込み,それにより大部分の心筋が壊死となったことが判明した.このことにより病院の責任者が医療事故でないとの判断をしたことが医療の質をきわめて下げたことが判明した.したがって,病院の管理者が医療事故でないと判断しても,家族が反対するときは病院としては関係する学会に依頼して優秀な専門医師に医療事故の決定を行ってもらうことが,必要な医療事故調査・支援センターに調査を行うことにより,医療の質の向上につながり,患者中心の医療を行うことになってくることが判明する.