著者
髙梨 知揚
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.32-42, 2019-07-31 (Released:2020-07-31)
参考文献数
26

数が少ないながらに鍼灸師ががん緩和ケアに関与しているという報告が散見されるようになった。しかし通常医療とは医学モデルを異にする鍼灸師という職種が、医師や看護師らが中心となって構築する緩和ケアの場においてどのように他職種と関係を構築しながらケアを実践しているかは明らかになっていない。そこで本研究では、6名の鍼灸師と5名の他職種を対象として、チームでの緩和ケアの実践経験を有する鍼灸師と他職種の職種間連携の実態を明らかにすることを目的にインタビュー調査を行った。本研究結果から、病院における緩和ケアの「場」において両者が「繋がる」ための「障壁」が存在することが明らかになった。こうした「障壁」の存在に対して鍼灸師は様々な「戦術」を駆使し、一方で他職種も多様性のある医療を実践するために「小さな戦略」を展開しながら、ケアの「場」における相互の「繋がり」を構築する様が明らかとなった。