著者
髙橋 三郎
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.233-238, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究では,なぜ吃音が母音で生じやすいと感じられるのかを明らかにするために,学齢期の吃音児の自由会話を分析し,子音と母音の違いが吃音の生起に与える影響を検討した.そのうえで,語頭モーラ頻度と吃音生起数の関係性を検討した.対象児は6歳9ヵ月から12歳1ヵ月までの吃音児20名であった.対象児と筆者との自由会話の様子を録画し,発話を分析した.二項ロジスティック回帰分析の結果,子音と母音の違いは吃音の生起に有意な影響を与えなかった.また,一部の母音(「い」「お」「あ」)は他の子音よりも語頭モーラ頻度が高く,吃音生起数も多かった.以上のことから,一部の母音で吃音が生じやすいと感じられるのは,語頭モーラ頻度の高さによって吃音生起数が多くなることが関与すると推測された.
著者
髙橋 三郎
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.191-195, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

本研究は,学齢期の吃音児を対象とし,語頭と語末のバイモーラ頻度が吃音頻度に及ぼす影響を検討したものである.対象児は7歳から12歳の吃音児21名であった.対象児に,語頭と語末のバイモーラ頻度をそれぞれ独立に操作した4種類の3モーラの刺激語(「高-高」語,「高-低」語,「低-高」語,「低-低」語)を音読させた.その結果,語頭のバイモーラ頻度の影響は語末のバイモーラ頻度が低いときのみ認められた.また,語末のバイモーラ頻度の影響は語頭のバイモーラ頻度が低いときのみ認められた.これらの結果から,語頭と語末のバイモーラ頻度は単体では吃音頻度に影響を及さないことが示唆された.むしろ「低-低」語の吃音頻度が4種類の刺激語のうち最も高かったことから,語全体のバイモーラ頻度が吃音の生起に影響すると考えられた.