著者
髙橋 利博
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
no.48, pp.1-18, 2020-03-01

本研究の目的は,岐阜市の繊維産業と高齢者の貧困を縫製加工業に従事してきた高齢者の実態から分析し,その要因を明らかにすることにある。戦後の岐阜市は,縫製加工業が基幹的産業として発達してきた。しかし,グローバル化や安価な製品の輸入により縫製加工業は衰退の危機にあり,これらの事業所に携わる高齢者の生活は,不安定な収入による貧困を伴う。『国民生活基礎調査』は高齢者の貧困層の広がりを示しており,岐阜市の生活保護世帯と国民保険料滞納世帯も増加している。これらの貧困層に対する社会保障が機能しておらず,逆に高い公的保険料が市民生活の困難性をもたらす。このように産業構造の転換と社会保障の後退が労働者層への貧困の要因を作っているが,求められるのは生活に困っている国民を救う社会保障の充実である。高齢者の貧困産業構造国民健康保険生活保護国家責任