著者
髙瀨 愛理 大山 潤爾
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.9-19, 2022-08-31 (Released:2022-09-23)
参考文献数
20

視覚呈示される単語の発音容易性は,その単語の記憶保持成績に影響することが報告されているが,発音容易性が単語の記銘や符号化といった認知過程から影響を及ぼすのか,その後の記憶保持過程にのみ影響するかは明らかになっていない.実験1では,先行研究の発音容易性で分類した発音容易語と発音困難語と,効果の比較のための非単語を用いて,単語呈示時間の認知閾を比較し,発音容易性の影響を検討した.実験2では,単語の読み上げ課題を行い,発音時間による発音容易性の分類を用いて,実験1と同様の分析を行った.その結果,実験1と2の両方で,発音容易語と発音困難語の間で単語呈示時間の認知閾に有意な差は見られなかった.本研究結果から,視覚呈示された単語の認知過程においては音韻的符号化を用いずに視覚的に単語が認知されることで発音容易性の影響を受けにくく,それ以降の記憶保持過程では音韻ループが利用されることで発音容易性の影響を受ける可能性が示唆された.本研究では,動的な情報における表示時間設計への応用可能性についても検討した.