- 著者
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岡安 一郎
達 聖月
鮎瀬 卓郎
和気 裕之
- 出版者
- 日本口腔顔面痛学会
- 雑誌
- 日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.15-20, 2018 (Released:2019-12-04)
- 参考文献数
- 25
症例の概要:患者は50代女性(主婦).X年11月,左側のこめかみと左上臼歯部の痛みを自覚し,近医歯科を受診した.「非定型歯痛」との診断で治療を受けるも症状変わらず,翌12月,「長崎大学病院オーラルペイン・リエゾン外来」紹介受診となった.口腔顔面領域の診察と検査結果から,器質的異常所見は認められなかったが,国際頭痛分類第3版beta版に準じ,「前兆のない片頭痛」とそれに起因する「神経血管性歯痛」が疑われた.また,「緊張型頭痛」,「パニック障害」の既往もあり,当院・総合診療科(内科)ならびに精神神経科と連携した.結果,「緊張型頭痛」に加え,「前兆のない片頭痛」,「不安障害」と診断された.治療は医療連携の下,病態説明と生活指導,心身医学療法,漢方治療にて,歯痛と頭頸部痛,めまいやふらつきなどの随伴症状が軽減し,良好な疼痛管理が維持できるようになった.考察:本症例は,MW分類(心身医学・精神医学的な対応を要する患者の分類)Type C(身体疾患・精神疾患併存ケース)に該当する.このようなケースにおいては,医科身体科ならびに精神科との医療連携が必要不可欠となる.本症例のように,痛み以外の種々の症状が伴うケースに対しては,漢方治療が有効となり得る.結論:口腔顎顔面領域の症状を主訴とする患者は歯科外来を受診するが,医科の身体疾患・精神疾患も考慮して,総合的な判断の基で対応することが必要となる.