著者
戸谷 裕之 堀口 淳 鯉淵 幸生 飯島 耕太郎 狩野 貴之 落合 亮 小山 徹也 飯野 佑一 森下 靖雄
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.281-284, 2003
被引用文献数
1

頚部リンパ節転移巣に扁平上皮癌成分があり, 診断に難渋した甲状腺オカルト癌の1例を経験したので報告する.患者は64歳男性で, 平成11年9月に検診で左頚部腫瘤を指摘され, 精査目的で当科外来を受診した.腫瘤は左胸鎖乳突筋外側に位置し, 3.7×3.1cm大, 弾性硬で可動性不良であり, 嚥下との共同運動はなかった.甲状腺に明らかな腫瘤を触知しなかった.甲状腺機能, CEAおよびSCCは正常範囲内であった.サイログロブリンは143ng/mlと上昇していた.頚部超音波検査では3.2×2.8cm大の不整形で内部不均一, 境界は比較的明瞭な低エコー像を認めた, 甲状腺との連続性はなく, 甲状腺内に明らかな病変は認められなかった.頚部CTでは約3cm大の不整形, 境界明瞭で, 内部不均一な腫瘤像を認めた.腫瘍の針生検で扁平上皮癌の疑いがあり, 確定診断のためincisional biopsyを施行し, 扁平上皮癌成分を伴う甲状腺乳頭癌の診断を得た.甲状腺オカルト癌の診断で, 甲状腺全摘およびリンパ節郭清を施行した.摘出した腫瘍は3.8×2.6×2.0cm大, 灰白色, 充実性で, 甲状腺との連続性はなく, 割面でも甲状腺内に明らかな病変は認められなかった.甲状腺の病理検査で右葉下極付近に0.2cm大の微小乳頭癌を認めた.