著者
調 憲 播本 憲史 小山 洋
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.235-242, 2020-08-01 (Released:2020-09-03)
参考文献数
9

【背景・目的】 COVID-19感染症は世界的なパンデミックの状況となった.日本でも2020年1月から5月にかけて大きな感染拡大が見られた.中国では,感染率は地域によって大きな差があり,人口密度の高い地域ほど高いことが報告されている.本邦においても都道府県ごとの累積感染者数が大きく異なるものの,詳細な検討はない.【対象と方法】 日本において初発患者が見られた2020年1月16日から多くの都道府県で流行がほぼ終息し始めた2020年5月3-6日までの約110日間における47都道府県におけるCOVID-19に対するPCR検査陽性者(累積感染者)の数を都道府県人口で除した累積感染者の割合(累積感染割合)と人口集中度,人口密度,公共交通機関を用いて通勤・通学する人の割合,人口当たりの乗用車保有台数の指標との相関を単・多変量解析を用いて検討した.さらにCOVID-19感染者のうち,感染経路が不明な者,調査中など明らかな感染経路不明な感染者を感染経路不明割合としてそれぞれの因子との関連を単・多変量にて解析した.さらに回帰直線の95%信頼区間を超えて高い感染率を示す都道府県について検討をした.【結 果】 単変量解析では都道府県別の累積感染割合とすべての因子は有意な相関を示した.多変量解析では累積感染割合では人口密度が独立した因子として選択された.さらに感染経路不明割合とすべての因子は単変量解析で相関した.同様に多変量解析では人口密度と公共交通機関を用いて通勤・通学する人の割合が独立した因子として選択された.回帰直線の95%信頼区間を超えて感染率の高い都道府県には石川,富山,福井県,高知県,東京都,北海道などが挙げられた.【結 論】 COVID-19累積感染割合は人口密度などの因子と強い相関を認め,ポストコロナの時代に向けて「密集」,「密接」を回避するライフスタイルの導入が重要と考えられた.95%信頼区間を超えて感染割合の高い都道府県においては観光や夜の繁華街など人口密集の要因以外が関与している可能性があり,地域別の詳細な解析が今後の感染対策に有用と考えられた.
著者
Kenichi Otsuka Masayuki Tazawa Yoko Ibe Tomotaka Inoue Minori Kurosaki Kenji Shirakura Naoki Wada
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-5, 2018-02-01 (Released:2018-04-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1

Background: Vertebral compression fracture (VCF) is a major injury that occurs in elderly individuals. The aim of this study is to predict the functional outcomes of elderly female patients with acute VCF based on their nutritional status. Methods: A total of 69 female patients with acute VCF were included in the present study. The age, fracture location, body mass index, grasping power, the amount of the patient's daily nutritional intake, Mini-Mental State Examination (MMSE) score and nutritional status (determined from laboratory findings) were evaluated at the time of admission. After in-hospital rehabilitation, the patients were divided into two groups based on their motor Functional Independence Measure (mFIM) scores at the time of discharge. A multivariable logistic regression analysis was performed to identify factors that predicted the outcome. Results: The patients were divided into the high mFIM (score≥79, n=36) and the low mFIM (score<79, n=33) groups. The multivariate logistic regression analysis showed that the amount of the patient's nutritional intake and the MMSE score were associated with the outcome. Conclusions: he cognitive status and the amount of the patient's nutritional intake were associated with the prognosis of elderly women with acute VCF.
著者
戸谷 裕之 堀口 淳 鯉淵 幸生 飯島 耕太郎 狩野 貴之 落合 亮 小山 徹也 飯野 佑一 森下 靖雄
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.281-284, 2003
被引用文献数
1

頚部リンパ節転移巣に扁平上皮癌成分があり, 診断に難渋した甲状腺オカルト癌の1例を経験したので報告する.患者は64歳男性で, 平成11年9月に検診で左頚部腫瘤を指摘され, 精査目的で当科外来を受診した.腫瘤は左胸鎖乳突筋外側に位置し, 3.7×3.1cm大, 弾性硬で可動性不良であり, 嚥下との共同運動はなかった.甲状腺に明らかな腫瘤を触知しなかった.甲状腺機能, CEAおよびSCCは正常範囲内であった.サイログロブリンは143ng/mlと上昇していた.頚部超音波検査では3.2×2.8cm大の不整形で内部不均一, 境界は比較的明瞭な低エコー像を認めた, 甲状腺との連続性はなく, 甲状腺内に明らかな病変は認められなかった.頚部CTでは約3cm大の不整形, 境界明瞭で, 内部不均一な腫瘤像を認めた.腫瘍の針生検で扁平上皮癌の疑いがあり, 確定診断のためincisional biopsyを施行し, 扁平上皮癌成分を伴う甲状腺乳頭癌の診断を得た.甲状腺オカルト癌の診断で, 甲状腺全摘およびリンパ節郭清を施行した.摘出した腫瘍は3.8×2.6×2.0cm大, 灰白色, 充実性で, 甲状腺との連続性はなく, 割面でも甲状腺内に明らかな病変は認められなかった.甲状腺の病理検査で右葉下極付近に0.2cm大の微小乳頭癌を認めた.
著者
設楽 利二 鈴木 則夫 黒岩 実 伊藤 里加 阿部 昌江 土田 嘉昭 松島 成実 真鍋 重夫
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.201-207, 2004-08-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
16

【背景】群馬県における神経芽細胞腫マススクリーニングは1984年7月より開始され今年で20年を迎えた.今回本県のマススクリーニングと発見症例の予後について検討したので報告する.【対象と方法】生後6カ月の乳児を対象として神経芽細胞腫マススクリーニングを施行した.検査は尿中のVMAおよびHVAを測定し行った.検査値が高値の症例は医療機関に紹介され神経芽細胞腫の精密検査を受けた.マススクリーニングにて発見された神経芽細胞腫症例は全例登録し, またこの間にマススクリーニング以外で診断された神経芽細胞腫についても予後の追跡を行った.【結果】2003年3月までに343,812例が受診し, 2,800例が精密検査を受診している.そのうち65例が神経芽細胞腫と診断された.この間に発生した神経芽腫総数は97例で, マススクリーニング発見例は67.0%を占める.マススクリーニング発見例に早期例の多いことが認められた.マススクリーニング陰性例が14例 (14.4%) に認められており, 死亡例の60%はこのマススクリーニング陰性で発症した症例であった.死亡例の他の40%はマススクリーニング受診以前またはマススクリーニング非受診で発症した症例であった.【結語】マススクリーニング開始後の神経芽細胞腫の発見例は増加したが進行神経芽細胞腫例の減少は認められなかった.神経芽細胞腫死亡例は近年減少しており, 治療技術の進歩と考えられた.厚生労働省の決定に基づき群馬県においても検査事業については平成16年4月から休止となることが決定された.
著者
杉本 厚子 堀越 政孝 高橋 真紀子 齋藤 やよい
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.123-131, 2005-05-01
被引用文献数
2 4

【目的】患者の異常を察知した時に, 看護師が捉えた事象と臨床判断の特徴を明らかにすることである.【方法】外科系病棟に勤務する看護師15名の患者の異常を察知したエピソードを, グループディスカッションを通して抽出し, 内容分析した.【結果】看護師が捉えた事象は, 異常な眠気, 表情の変化, 反応の鈍さ, 活動の低下, 予測外の症状, つじつまの合わない会話, 違和感のある臭気であり, 多くの看護観察にもとづく非言語的サインであった.異常を察知した臨床判断には, 【今までとは違う感覚】, 【通常とは違うという感覚】, 【情報に矛盾があるという感覚】であり, 「その患者」のデータや経験の分析的判断と, 「そのような患者」の看護経験にもとづく非分析的判断の両者を活用していた.【結語】看護師は患者の微妙な非言語的サインにより異常を察知し, 論理的分析と経験によって培われた直観的分析を駆使して臨床判断を行っていた.
著者
茂木 健司 笹岡 邦典 樋口 有香子 根岸 明秀 橋本 由利子 外丸 雅晴
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.239-244, 2007-08-01 (Released:2007-09-11)
参考文献数
28

【背景・目的】 口腔に存在する多数の常在菌は局所的疾患の原因となるだけでなく, 全身的障害をも引き起こす. そのため, 口腔ケアは全身疾患予防の観点から重要視されている. 今回, 各種含嗽剤による口腔常在菌数減少効果について検討した. 【対象と方法】 健常成人21名に対し, 含嗽前の唾液, および7%ポビドンヨード30倍希釈液, 薬用リステリン®(青色) 原液, 薬用クールミントリステリン®(黄色) 原液, おのおの30mlを, 15秒間口腔内に貯留後の唾液を検体とし, 一般細菌, カンジダの培養後, 含嗽剤作用前後のコロニー数を比較した. 【結 果】 一般細菌は, 含嗽前では全例から検出されたが, 含嗽後では69~93%で減少した. カンジダは, 含嗽前では27~47%に検出され, 含嗽後では25~88%で減少していた. いずれも薬用リステリン®(青色) の減少率が高かった. 【結 語】 含嗽剤を口腔に貯留することにより, 一般細菌, カンジダを減少させる効果が認められ, 特に薬用リステリン®(青色) の効果が高かった.
著者
茂木 健司 笹岡 邦典 佐々木 真一 鈴木 克年 根岸 明秀
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.511-516, 2000-11-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
10

著者らは, 口腔機能検査の一つとして口腔内容積を測定する方法, 含水法を考案し, その再現性, 客観性を検討した.方法 : 水を満たした60mlのシリンジ先端を被験者の口角より口腔内に挿入後, 水を注入し, その最大値を記録し, 6回の平均値を口腔内容積とした.結果 : 1.健常被験者10名の口腔内容積の測定から, 被験者の顎位を中心咬合位で測定する方が, 自由な顎位での測定より測定値に変動が少なく, 再現性が高いと考えられた.2.口腔内容積は身長, および全頭高との問に相関が認められた.そのため口腔内容積を個人間で比較するときは身長を付記すべきものと思われた.3.各種顎口腔外科的手術患者7例の手術前後の口腔内容積の変化は手術内容とよく一致しており, 本法は客観性があると考えられた.
著者
安田 正人 安部 正敏 田村 敦志 石川 治
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.469-472, 2002-11-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
10

21歳, 男性.屋外作業時の全身の無汗と皮膚の痛みを主訴に来院.初診時, 手掌, 足底, 額部, 頸部, 上胸部, 腋窩, 外陰にわずかに発汗を認めたものの, それ以外のほぼ全身の皮膚は乾燥していた.入院後施行した発汗テストで発汗はなく, 患部皮膚の病理組織学的所見ではエックリン汗腺周囲に軽度の単核球浸潤を認めるのみであった.精査の結果, 明らかな基礎疾患を見出し得なかったことから特発性後天性無汗症と診断した.ステロイドパルス療法2クール実施後に症状は軽快した.
著者
田邉 美佐子 吉田 久美子 黒澤 やよい 神田 清子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.25-30, 2009

<B>【目 的】</B> 小児期に骨髄ドナーになったきょうだいの経験を記述し, 小児ドナー経験者への看護支援を検討する. <B>【対象と方法】</B> 8歳の時に6歳の妹に骨髄提供をした20代前半の女性A氏に面接を行い, 質的記述的に分析した. <B>【結 果】</B> A氏は骨髄提供について, 躊躇する気持ちや親の期待を感じながらも, 自分の意思で決めたと認識していた. 骨髄提供後は, 妹との一体感を感じるようになり, 妹を見守ってきた. 現在は, ドナーになってよかった, 自慢できることだと捉えていた. <B>【結 語】</B> 小児ドナー経験者は, 現在の状況からドナーになった理由を捉え直すこと, レシピエントのQOLが自己価値観に影響を及ぼすことが示唆された. 思春期・青年期に歪んだ自己存在が認知されないよう, 継続した直接的支援とレシピエントを介した間接的支援の必要性が考えられた.
著者
北田 陽子 瀬山 留加 高井 ゆかり 武居 明美 神田 清子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.489-498, 2011-11-01 (Released:2011-12-14)
参考文献数
22

【目 的】 一般病棟に勤務する看護師による終末期がん患者の家族への支援内容を明らかにすること. 【対象と方法】 倫理審査委員会の承認を得て, A病院の一般病棟に勤務する看護師で, がん看護従事年数が通算3年以上の者を対象に, 半構成的面接によりデータ収集し, 質的帰納的方法を用いて分析した. 【結 果】 対象は19名で, がん看護従事年数は3-20年であった. 分析の結果, 5コアカテゴリーである『家族支援の前提となる経験知や知識技術』『家族支援を行う上での信頼関係の形成』『家族成員及び家族内の状況把握と問題の明確化』『家族を全人的に捉えた実践』『実践の自己評価』が構成された. 【結 語】 看護師は終末期がん患者の家族支援において, 経験などから家族支援の意味づけや, よりよい看護支援への動機づけを行っていた. このことから, 自己の看護を振り返る機会を増やすことで, 家族支援の実践の向上に繋げられる可能性が示唆された.
著者
今野 兼次郎
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.157-159, 2001-03-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
7
著者
原 大地 山口 俊輔 下田 佳央莉 勝山 しおり 増田 樹 十枝 はるか 中沢 信明 李 範爽 外里 冨佐江
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.37-42, 2014-02-01 (Released:2014-04-04)
参考文献数
16

【序 論】 Mental rotation (以下, MR) とは, 3次元空間で自由に回転する図形が何であるのかを照合する心的活動である. リハビリテーション領域においても治療的介入手段として, MRの基礎研究・臨床応用が進められている. 身体部位を用いた回転画像を提示した時の反応時間は, 回転角度の増加に伴い遅延すると報告している. 反応時間は, 加齢やスポーツ実施などによる影響があると報告されている. このように年齢や表示角度に関するMRの関連については報告がみられているが, 視覚情報の入力に関与すると思われる眼機能 (利き目) とMRとの関係を報告した論文は少ない. したがって, 本研究では身体部位である手の回転画像を用いて, これまでに報告されてきたMR反応時間と性差, 利き手との関連に加え, 利き目の属性との関連を検討することを目的とした. 【方 法】 本研究は群馬大学倫理審査委員会により承認された. 対象は103名の健常大学生 (平均年齢20.9±2.2歳, 男性51名, 女性52名, 右利き目者59名, 左利き目者44名) であった. 課題は両手の画像が0°, 90°, 180°, 270°回転してある32枚の写真によって構成され, それらの写真がランダムにPCの画面に表示された. 被験者は画像を見て, それが右手なのか左手なのかをPCのキーを押すことで回答し, MR反応時間と回答が記録された. 統計解析は一元配置分散分析, 独立したt検定を行った . 解析には統計ソフトIBM SPSS Statistics 20を使用し, 有意水準を5%とした. 【結 果】 MR反応時間は, 回転角度の180°と0°, 90°, 270°間で有意差がみられた (p<0.05). 利き目では有意差がみられたが (p<0.05), 性別, 利き手では有意差はなかった. 【考 察】 MR反応時間は性別, 利き手ではなく利き目と関連があることが示唆された. すなわちMRに関連する情報処理過程は利き目によって異なることが示唆された.

2 0 0 0 OA 診断と論理

著者
梅枝 愛郎
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.375-381, 2010-11-01 (Released:2010-12-16)
参考文献数
3

診療における最初の重要な判断である診断について考察した. その思考過程では, まず問診・診察・検査などで患者情報を収集し, これらを整理, 分析して帰納的に仮診断を立てること (仮説法) が行われる. 次に, 確立されている疾患を大前提とし, 仮診断 (小前提) がこれに適っていること, 正しいことを演繹的論証で導くが, その際には三段論法を用いていることが多い. この診断体系を仮説演繹法というが, その仕組みと健全性を検証した. 多くの医師は無意識にこの診断過程を辿っていると思われるが, この体系や三段論法について理解・認識している者は少ないようである. また, 診断における論理について解説した書もあまり見当たらない. 本稿では, 症例を提示しながら診断の理論体系について考察したが, とりわけ仮診断とこれを導く帰納的推論の重要性を述べ, その為の情報収集と分析の技術・知識と経験の大切さについて言及した.
著者
浦野 喜美子 山本 亜矢子 山田 幸世 杉木 由美子 小池 幹義 田仲 久人 大山 隆幸 浅見 隆康 高橋 篤
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.325-333, 2014-11-01 (Released:2015-01-07)
参考文献数
5

【背景と目的】 群馬県山間部の高齢過疎化が顕著な2次保健医療圏A地区は他の県内2次保健医療圏と比べて自殺率が高いため, A地区特有の自殺率上昇要因を検討する. 【対象と方法】 群馬県と県内2次保健医療圏で, 研究対象地区のA地区, 比較対象地区としてA地区と同様の人口構成や地勢的状況にあるB地区, 中核市に隣接しているが高齢過疎化の著しい山間部も含むC地区, 主に平野部に位置し中核市に隣接するD地区, 中核市のE地区を選定し, 平成21年 (一部20年) -24年における各地区自殺率・男女年代別自殺率・自殺原因・自殺者の職業と同居率を比較検討, A地区年代別の自殺者配偶関係の検討とA地区各市町村別の自殺率・男女年代別自殺率・自殺者の同居率と年齢の比較検討も行った. 【結 果】 (1) A地区は男女とも他地区と比べて自殺率が高く, 年代別検討では他地区と比べて男性自殺率が20歳代, 40歳代, 50歳代, 70歳代で高く, 女性自殺率が70歳代で高かった. (2) A地区男性自殺者の自殺理由は他地区と比べて経済・仕事・男女間の問題の占める割合が高く, 健康問題の占める割合が低く, 女性自殺者では家庭問題の占める割合が低かった. (3) A地区は他地区と比べて男性自殺者で自営業や勤務者の占める割合が高く, 女性自殺者で無職の占める割合が高かった. (4) A地区男性自殺者同居率は他地区と比べて比較的高く (79%), 女性自殺者は比較的低かった (71%). (5) A地区男性自殺者40-50歳代の離別・未婚率, 女性自殺者60歳以上の死別率は高く, 女性自殺者は男性より高齢であった. (6) A地区各市町村別の検討で, A地区辺縁に位置するe村では自殺率が特に男性で高かった. 村地域の自殺者は高齢者, 特に女性が多く, 女性自殺者同居率が高かった. 【結 論】 群馬県A地区は人口構成や地勢的状況が近似しているB地区やC地区と比べて自殺率が高く, その原因としてA地区特有の要因が考えられた. すなわち, (1)離別, 未婚, 仕事問題や経済的理由, あるいは男女間の問題を背景とした20歳代と40-50歳代男性における自殺率の上昇, (2)配偶者の死別や家庭内孤立などを契機にした70歳代女性の自殺率上昇が推測された. さらに, (3)A地区村部では高齢自殺者が特に女性で多く, 健康問題と共に前述の配偶者の死別による孤独, 家庭内孤立, あるいは鬱傾向等の村部特有の要因があることも推測された. A地区の自殺対策ではこれらの要因を踏まえた対応が必要と考える.
著者
小林 剛一 平形 ひとみ 井上 まさよ 横山 貞子 石田 美紀 望月 栄美 高坂 寛之 関口 文子 中村 幸男
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.31-41, 2018-02-01 (Released:2018-04-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

【背景・目的】 わが国は,超高齢社会に伴う「多死社会」を迎える.増加する死亡者を全て病院で看取る事は不可能であり,最期を迎える場の選択肢として,特別養護老人ホーム(以後特養)などの高齢者施設への期待が高まっている.特養1は,常時介護を必要とし,在宅生活が困難になった高齢者が入居する老人福祉施設である.本研究の目的は,終末期医療における看取り,死亡場所としての特養の意義を明らかにすることである. 【対象と方法】 平成19年4月~平成29年1月までの施設看取り63名を対象として,診療録,看護記録,死亡診断書等より,平均寿命,死因等について分析した. 【結 果】 退所者167名中,看取り死亡者は63名(38%)であった.平均年齢は,90.07歳(男性87.4歳,女性90.7歳)で,死因は老衰が31名(49%)と最も多かった.認知症は,アルツハイマー型認知症,脳血管性認知症等,軽度~中程度を含めてほぼ全例(98%)に認められた.在所期間は,58日から18年5か月(平均4年9か月)であった. 【結 語】 我々の特養での看取り例は,日本人の平均寿命を越えた老衰死が多かった.超高齢社会を迎え,要介護高齢者の施設として,一層のニーズが見込まれる特養は,終末期の看取り場所としての役割を担う施設としても,重要な位置を占めるものになると考えられた.
著者
狩野 太郎 小川 妙子 樋口 友紀 廣瀬 規代美
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.335-341, 2014-11-01 (Released:2015-01-07)
参考文献数
23
被引用文献数
1

【背景・目的】 本研究は, 老人福祉センターを利用する高齢者の足トラブルの実態と, 疾患及び足トラブル相互の関連を分析し, 足トラブルが発生するメカニズムの検討を目的とした. 【方法と対象】 利用者101名を対象に, 足部の観察と面接調査を行った. 足トラブルと疾患及び足トラブル相互の関連についてχ2検定を用いて分析した. 【結 果】 足トラブルは足部皮膚乾燥44.6%, 角質肥厚40.6%, 肥厚爪37.6%の順となっていた. 角質肥厚・足部皮膚乾燥・肥厚爪と高血圧に関連が見られた. 足トラブル相互の関連については, 角質肥厚と肥厚爪, 胼胝と巻き爪に有意な関連が見られた. 【結 語】 高血圧と足トラブルの関連については不明な部分が多いものの, 末梢循環の低下や降圧利尿剤による影響が考えられ, 足部皮膚乾燥や角質肥厚を有する者の割合が高いことから, 重点的フットケア指導が有用と思われる.
著者
京田 亜由美 神田 清子 加藤 咲子 中澤 健二 瀬山 留加 武居 明美
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.111-118, 2010-05-01 (Released:2010-06-10)
参考文献数
46

【背景・目的】 インフォームド・コンセントと患者の意志決定が重要視され, がんなどの病を抱える患者は, 否応なく自らの死を意識するため, 患者の自分らしさを支える看護が求められている. 本研究の目的は, 死を意識する病を抱える患者の死生観に関連する研究を分析し, 死生観の内容を明らかにすることである. 【対象と方法】 1999年から2009年までの原著論文を対象とし, 医学中央雑誌を使用し, "死生観" and "患者" と, "病気体験" をキーワードに検索を行い, 死に至る病を抱える患者を対象とし, テーマ内容に沿った42論文を対象に, 分析を行った. 【結 果】 死生観に関する研究内容は,《生かされていると感じながら, 最期まで精一杯生きたいという死生観》《周囲との関係性を最期まで大切にしたいという死生観》《逃避と希望という両側面の死への願い》《逃れられない死への恐れと孤独感》の4つのカテゴリから形成された. 【結 語】 死を意識した患者への看護は, 症状マネジメントと自律への支援, 患者・家族の関係性の強化と死について語る場の提供への支援の必要性が示唆された.
著者
岡村 典子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.233-242, 2013-08-01 (Released:2013-09-17)
参考文献数
22

本研究は, Emotional Intelligence理論を用いた研修プログラムを中堅看護師に実施することによる効果を検討し, 今後の育成の在り方を考察することを目的に取り組んだ. 対象者は, リーダーシップ研修に参加する中堅看護師17名で, 情動知能尺度 (EQS), リーダーシップ・メンバーシップに関する調査票を用いて, 研修前後における感情活用能力及びリーダーシップ・メンバーシップに関する力の変化を検証した. その結果, 感情活用能力を構成する "自己対応" "対人対応" "状況対応" の3領域は有意に上昇していた. また, リーダーシップ・メンバーシップに関する力として, "リーダーシップ" "スタッフとの関係" "職場への所属感" の3つが有意に上昇していた. 今後は, 感情を活用するにあたり重要となる "自己洞察" "状況コントロール" の能力向上を図るため, 集合研修におけるプログラムの精選と研修担当者のメンターとしての役割が重要と考える.