著者
鳥居 伸一郎 松井 徹
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.131-138, 2011-05-25 (Released:2011-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

日本国内の290戸の黒毛和種繁殖農場において妊娠末期の繁殖雌牛に給与されていた飼料の,マンガン・鉄・コバルト・銅・亜鉛・モリブデンの含量を測定した.日本飼養標準で示される要求量の適正値を下回る飼料を与えていた農場の割合は,銅で53.4%,亜鉛で14.1%であり,銅では北海道が九州沖縄に対して,亜鉛では北海道が東北および九州沖縄に対して,有意に割合が高かった.鉄含量が摂取許容限界を超えた飼料が,4.1%の農場でみられた.調査農場の平均分娩間隔と,飼料の元素含量との関連を検討した.北海道は東北と九州沖縄のいずれに対しても有意に分娩間隔が短かった.北海道,東北,九州沖縄の地方別に行った単回帰分析で,有意な回帰が認められたのは,九州沖縄のマンガン・鉄・銅であり,回帰直線の傾きはいずれも負の値であった.すなわち,九州沖縄では,マンガン・鉄・銅のいずれかの含量が高い飼料を与えている農場で分娩間隔が短いことが示された.北海道と東北では,いずれの元素の飼料中含量も平均分娩間隔との間に有意な回帰が認められなかった.