著者
松井 徹
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.211-219, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
43

日本を含め先進諸国ではマグネシウム (Mg) 摂取不足が問題となっている。本稿では, われわれが行ってきたMgを中心としたミネラル栄養に関する基礎的研究を紹介する。溶解性はMg吸収に大きな影響を及ぼすが, 海藻や飲用水中Mgの吸収を検討し, 溶解しているMgの形態や消化管内滞留時間もMg吸収に影響を及ぼすことを示した。Mg欠乏は肝臓中マスト細胞数を増加させることを明らかにした。肝臓および肝臓を構成する細胞のモデル培養系を用いた代謝物の網羅的解析によって, Mg欠乏により生じる新奇な代謝異常を明らかにした。Mg欠乏時の肝臓中金属類の網羅的解析を行い, モリブデンなど8種の金属類濃度が変動することを見出した。また, Mg欠乏による肝臓中亜鉛トランスポーター (Zip14) とメタロチオネインの発現増加が肝臓中亜鉛を増加させること, Mg欠乏は鉄過剰に対するヘプシジン発現応答を抑制することによって鉄代謝を撹乱することを示した。加えて, アクチビンBやインターロイキン-1βが, ヘプシジン発現亢進を生じる分子機構を解明した。
著者
清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.99-113, 2017-10-10 (Released:2017-12-25)
参考文献数
47

維持期におけるイヌ用レシピを、飼い主へのアンケート調査(n=63)ならびにイヌの手作り食の成書(n=145)から収集した。日本食品標準成分表等を用いて各レシピの栄養素含量を算出し、AAFCO養分基準(2016)の最小値を上回る場合を充足とし、最大値を上回る場合を過剰とした。ほとんどのレシピにおいて、粗タンパク質と必須アミノ酸は充足していた。一方、カルシウム、カルシウムとリンの比、鉄、銅、亜鉛、ヨウ素、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、リボフラビン、ビタミンB12の不足しているレシピは多かった。また、一部のレシピではn-6とn-3系脂肪酸の比、カルシウム、リン、カルシウムとリンの比、ヨウ素、セレン、ビタミンAやビタミンDが過剰であった。AAFCO養分基準を満たすように手作り食を調製するには、上記の不足しやすい栄養素を多く含む食材を用い、過剰となりやすい栄養素を多く含む食材の使用量に注意する必要があることが示された。
著者
清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.19, no.Suppl, pp.suppl_32-suppl_33, 2016-06-30 (Released:2017-04-10)
参考文献数
3

アンケート調査により得たイヌの手作り食レシピと成書におけるイヌの手作り食レシピの食材と量より、食品成分表を用いて栄養素量を算出し、AAFCO養分基準(2016)の最小量及び最大量と比較した。8割以上のレシピがCa、Cu 、Zn、ビタミンAの最小量を下回り、一方ヨウ素やビタミンDの最大量を上回るレシピがあった。本試験の結果より、AAFCO養分基準を満たすように手作り食を調製する際には、上記の不足しがちな栄養素を多く含む食材を用い、過剰となりがちな栄養素を多く含む食材の量に配慮する必要があることが示された。
著者
武本 智嗣 舟場 正幸 松井 徹
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.157-163, 2017 (Released:2017-08-25)
参考文献数
32

現代的な食生活は脂肪とスクロースの過剰摂取を特徴としており, 低いマグネシウム (Mg) 摂取量もしばしば認められている。本試験では, 脂肪およびスクロースの過剰摂取がMgの生体利用性に及ぼす影響を検討した。5週齢のWistar系雄ラットに, 対照飼料, 脂肪とスクロース過剰 (HFS) 飼料, Mg欠乏 (MD) 飼料, 脂肪とスクロース過剰およびMg欠乏 (HFS + MD) 飼料を4週間給与した。Mg欠乏飼料を給与したMD区およびHFS + MD区で典型的なMg欠乏症である皮膚の炎症が認められ, HFS + MD区ではMD区より早期に皮膚の炎症が生じた。MD区およびHFS + MD区で骨中Mg濃度が低下し, 骨中Mg濃度はMD区よりHFS + MD区で低かった。一方, Mgが充足している場合, 脂肪とスクロース過剰摂取は骨中Mg濃度に影響を及ぼさず, 皮膚の炎症も引き起こさなかった。以上の結果から, 脂肪およびスクロースの過剰摂取は, Mg充足時にはその栄養状態に影響しないが, Mg欠乏飼料給与時にはMg欠乏を増悪することが明らかになった。
著者
松井 徹
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.171-174, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

芳香族有機硫黄化合物であるチアンスレン(TA)はジベンゾチオフェン(DBT)脱硫細菌Gordonia sp. TM414株とRhodococcus erythropolis KA2-5-1株により分解されたが,ベンゾチオフェン脱硫細菌Rhodcoccus jostii T09株には分解されなかった。当該培養液の酸性酢酸エチル抽出液を分析したところ,TA-スルホキシド,TA-スルホン,2-phenylsulfanylphenolが検出され,DBT分解に関して報告されている4S経路と類似の分解経路であることが示唆された。チアンスレンの脱硫は,Gordonia属細菌に類縁のRhodococcus 属細菌を用いても可能であることが知られた。
著者
菅野 大 清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹 友永 省三
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.Suppl, pp.suppl_33-suppl_34, 2019-06-30 (Released:2019-07-24)
参考文献数
2

市販されている維持期のネコ用総合栄養食(各10種のドライ製品とウェット製品)および5種の一般食(ウェット製品)におけるタウリンおよびメチオニンの充足・過剰を検証した。充足・過剰の判定はAAFCO養分基準(2016)に基づいて行った。総合栄養食では、すべてのフードにおいてタウリンとメチオニンは充足していたが、1つのウェット製品においてメチオニンが過剰であった。一般食では、タウリン不足のフードが認められ、メチオニンはほとんどのフードで過剰であった。メチオニン含量および表示されている(粗)タンパク質含量は正の相関を示したことから、メチオニンのアンバランスは生じないため、その過剰の問題はない可能性がある。総合栄養食であるドライ製品の一部を一般食に置きかえることを想定しても、タウリンは不足しないことが示唆された。
著者
寺地 智弘 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.18-22, 2011

30種類の市販ネコ用ウェットフードの重金属〔ヒ素 (As)、カドミウム (Cd)、水銀 (Hg) ならびに鉛 (Pb)〕濃度を測定し、5 種類の市販ヒト用ツナ缶詰中のそれと比較した。Cd濃度はネコ用ウェットフードの方がヒト用ツナ缶詰よりも有意に高い値を示したが、それ以外の重金属濃度に違いはなかった。EUが定めた重金属濃度に対する基準値と比較したところ、13例の総合栄養食の内、As、Hgに関してそれぞれ9 例、1 例が基準値を上回った。一方、17例の栄養補完食では、13例がAsの基準値を上回り、Pbの基準値を上回ったフードも 1 例あった。また、日本国内における家畜配合飼料の基準値を上回ったフードは、As、Pbに関してそれぞれ5 例、1 例あった。ネコの体重を4 kg、フードのラベルに記載通りの給餌方法による摂食量を仮定し、ヒトにおける重金属の暫定耐容一週間摂取量(PTWI) と比較したところ、Asでは全てのフード、Cdでは 17例、Hgでは 25例およびPbでは 7 例が上回った。本研究結果は、ペットフードの重金属に関する基準値を設定する基礎データとなり得る。
著者
西浦 誠 寺地 智弘 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.Suppl, pp.Suppl_52-Suppl_53, 2012-07-01 (Released:2013-03-21)
参考文献数
2

ICP-MS の半定量測定モードを用いて、ペットフードのトキシコメタローム解析を試みた。ペットフード中金属の半定量測定では、極めて濃度の低い元素を除き繰り返し再現性が比較的高かった。Li・Al・V・Mn・Co・Cu・As・Rb・Sr・Mo・Cd・Hg・Pb の 13 元素に関しては、添加回収率が 70%~120% であった。これら 13 元素で定量分析値に対する強い回帰が認められた。したがって、同時にこれら多数の金属測定が可能であることが示された。よって、ICP-MS の半定量分析は、金属によるペットフード汚染を防止する上で有効なスクリーニング手法となりうる可能性が示された。
著者
金森 耀平 村上 賢 松井 徹 舟場 正幸
出版者
日本微量栄養素学会
雑誌
微量栄養素研究 (ISSN:13462334)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.88-98, 2014-12-15 (Released:2022-12-28)
参考文献数
76

The liver-derived peptide hormone hepcidin is a master regulator of systemic iron homeostatis. Hepcidin binds to an iron exporter ferroportin expressing on the basolateral membrane of enterocytes and induces the internalization and degradation of ferroportin, leading to a decrease in intestinal iron absorption. Various stimuli such as body iron stores, inflammation, erythropoiesis, and hypoxia affect hepcidin expression through the transcriptional regulation. This mini-review summarizes current understandings on the factors affecting hepcidin expression.
著者
鳥居 伸一郎 松井 徹
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.131-138, 2011-05-25 (Released:2011-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

日本国内の290戸の黒毛和種繁殖農場において妊娠末期の繁殖雌牛に給与されていた飼料の,マンガン・鉄・コバルト・銅・亜鉛・モリブデンの含量を測定した.日本飼養標準で示される要求量の適正値を下回る飼料を与えていた農場の割合は,銅で53.4%,亜鉛で14.1%であり,銅では北海道が九州沖縄に対して,亜鉛では北海道が東北および九州沖縄に対して,有意に割合が高かった.鉄含量が摂取許容限界を超えた飼料が,4.1%の農場でみられた.調査農場の平均分娩間隔と,飼料の元素含量との関連を検討した.北海道は東北と九州沖縄のいずれに対しても有意に分娩間隔が短かった.北海道,東北,九州沖縄の地方別に行った単回帰分析で,有意な回帰が認められたのは,九州沖縄のマンガン・鉄・銅であり,回帰直線の傾きはいずれも負の値であった.すなわち,九州沖縄では,マンガン・鉄・銅のいずれかの含量が高い飼料を与えている農場で分娩間隔が短いことが示された.北海道と東北では,いずれの元素の飼料中含量も平均分娩間隔との間に有意な回帰が認められなかった.
著者
清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.12-21, 2017-04-10 (Released:2017-05-02)
参考文献数
31

イヌや飼い主の都合により市販のフードが使用できない場合は、手作りによる食餌の調製が必要になるが、入手しやすい食材のみで手作り食を調製する場合、AAFCO養分基準(2015)における特に微量栄養素量の最小値を満たすためには、サプリメントの使用が不可避であった。しかしこの度、AAFCO養分基準(2016)が公表され、多くの微量栄養素量の最小値が減少したため、この新基準に即したレシピ設計を試みた。食材の栄養素量は日本食品標準成分表を主に用いた。通常の食材のみではカルシウムの最小値の充足には限界があるので、カルシウム源として期待できる鶏卵殻のミネラル分析を行った。糖質源とタンパク質源からなる食餌を基本食とし、とうもろこし油、豚レバー、煮干し、小麦胚芽、ひじき、鶏卵殻を補助食とした。糖質源とタンパク質源を湿重量で等量用い、基本食と補助食を代謝エネルギーで等量用いることで、AAFCO養分基準(2016)を満たすことができた。
著者
寺地 智弘 岩田 法親 菱山 信也 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.7-11, 2015-04-10 (Released:2016-04-11)
参考文献数
21

ネコにおける被毛中水銀濃度と各種疾病の関係の予備的検討として、動物病院に来院した健常ネコ(n=33)と疾病ネコ(n=67)の被毛中水銀濃度を測定した。次いで、健常ネコの被毛中水銀濃度から暫定参照値上限を算出し、各種疾病のネコにおける被毛中水銀濃度との比較を行った。健常ネコの被毛中水銀濃度は0.2~6.4 mg/kgの範囲であった。得られた暫定参照値上限は9.2 mg/kgであり、健常ネコで暫定参照値上限を上回る個体は無かった。疾病ネコの被毛中水銀濃度は0.1~17.5 mg/kgの範囲であり、2頭の被毛中水銀濃度が暫定参照値上限を上回っていた。本試験では、ヒトやネコでの水銀中毒症として報告されている精神神経系疾患のネコが3頭、また、ヒトでの水銀中毒症として報告されている循環器系疾患のネコが3頭認められたが、いずれも暫定参照値上限を下回っていた。一方、口内炎と診断されたネコ4頭の内、2頭が暫定参照値上限を大きく上回っており、ネコにおける口内炎の一部が水銀過剰摂取と関連する可能性は否定できなかった。
著者
森本 吉春 松井 徹 藤垣 元治
雑誌
情報処理学会論文誌コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:18827810)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SIG5(CVIM13), pp.10-19, 2006-03-15

形状や変形を計測する方法はすでに多くの方法が開発されているが,高速・高精度で計測できるものは少ない.ここでは各種光学的方法により得られた投影格子や縞画像の位相を利用した方法を紹介する.とくに,3~4枚の画像から矩形波格子や余弦波格子の位相分布が連続的に計測できる積分型位相シフト法,位相シフトした多数の画像の各点の輝度のフーリエ変換により高精度に位相を解析できるフーリエ変換位相シフト法,複数の基準板を用いた高精度形状計測法,位相シフトデジタルホログラフィ干渉法を用いた変位計測法は実時間で計測したり,計算時間が少しかかっても高精度に解析したりすることができる.ここでは著者らが主として開発した計測方法の原理とその適用例を示す.
著者
林 海鷹 松井 徹 堀江 崇文 菱山 信也 藤瀬 浩 矢野 秀雄
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.53-56, 2003-04-10 (Released:2012-09-24)
参考文献数
17

一般臨床上健康な48頭の柴犬から採血を行い,高圧液体クロマトグラフィーにより血漿中ビタミンC濃度を測定した。供試犬の年齢構成は1歳未満4頭,1-2歳12頭,2-5歳7頭,5-10歳12頭,10歳以上13頭であり,性の構成は,雄13頭,雌28頭,避妊雌7頭であった。血漿中ビタミンC濃度は年齢の影響を受けたが(P<0.001),性の影響および年齢と性の交互作用は認められなかった。1歳未満の柴犬は,1歳齢以上のイヌと比較し血漿中ビタミンC濃度が高かった(P<0.01)。一方,1歳齢以降では加齢に伴う血漿中ビタミンC濃度の変化は認められなかった。1歳齢以上の柴犬における血漿中ビタミンC濃度は7.00±1.10mg/L(平均±標準偏差)であり,1歳齢以上の柴犬における血漿中ビタミンC濃度の標準的な値は4.8-9.2mg/L(平均±2×標準偏差)程度であることが推察された。
著者
松井 徹哉 水野 啓示朗 杉山 映 江仮 佳賢 日比野 智也
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.69, no.582, pp.87-94, 2004
被引用文献数
2 3

Until recently few research efforts have been directed toward the application of seismic isolation systems in large-span spatial structures. This is due to the light weight and relatively long natural period of this type of structure which makes it difficult to apply the commonly used isolation system composed of laminated rubber isolators and dampers. In this paper, the use of a seismic isolation system with sliding mechanism is proposed for large-span spatial structures. In order to confirm its effectiveness in reducing the seismic response, shaking table tests are performed using a small-scale arch model supported by the base structures. It is confirmed that the proposed seismic isolation system is effective in reducing substantially the response due to horizontal ground motions. It is also demonstrated that the response of the arch is significantly influenced by the dynamic properties of the base structures, but can be well predicted by the dynamic response analysis considering the arch-base structure interaction.
著者
寺地 智弘 西浦 誠 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-17, 2013-04-10 (Released:2013-05-17)
参考文献数
7

ICP-MSの半定量測定モードを用いて、20種類の市販キャットフード(ドライフード:10、ウェットフード:10)の有害金属類の同時分析を試みた。健康被害リスクがあるとされる元素の内、Li·B·Al·Ti·V·Cr·Mn·Fe·Co·Ni·Cu·Zn·Ge·As·Se·Rb·Sr·Mo·Ag·Cd·Sn·Sb·Ba·W·Hg·Pb·Biの27元素を対象に、添加回収率、変動係数 (CV)、また、定量測定値との回帰を検討したところ、Li·Al·V·Mn·Co·Cu·As·Se·Rb·Sr·Mo·Cd·Sn·Hg·Pbの15元素で、ドライフード、ウェットフードともに、添加回収率が70%~120%、CVが10%以下であり、定量分析値に対する強い回帰 (r2>0.9) が認められた。また、B·Ti·Fe·Zn·Sb·Baの6元素は、添加回収率が70%以下あるいは120%以上であったものの、定量分析値に対する強い回帰が認められた。Cr·Ni·Geの3元素は、定量性は低い、あるいはキャットフードからはほとんど検出されなかったものの、National Research Council (NRC) の定める、げっ歯類における最大耐容量を添加したところ、添加回収率は82~120%であり、検出可能であった。ICP-MSを用いた半定量分析は、多様な有害金属類によるペットフード汚染を防止する上で有効なスクリーニング手法となりうる可能性が示された。
著者
寺地 智弘 舟場 正幸 土井 花織 湯浅 一之 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.80-84, 2012-10-10 (Released:2013-01-25)
参考文献数
15

ネコ被毛中水銀濃度測定法を検討した。ネコの頭部、頚部、背部、腹部および尾部の被毛をアセトンおよび界面活性剤で洗浄後、マイクロウェーブ分解装置を用いて密閉状態で高圧湿式灰化した。分解産物を純水で希釈し、誘導結合プラズマ質量分析装置 (ICP-MS) を用いて水銀濃度を定量測定した。認証標準物質であるヒト頭髪を用いた結果、日内変動係数 (CV) は1.9%、日間CVは3.0%、回収率は103%であり、測定下限は0.088 mg/kgであった。ウェットフード (乾物当たり水銀含量1.73 mg/kg)を給与されているネコ5頭の頭部、頚部、背部、腹部および尾部の被毛中水銀濃度を測定した結果、水銀濃度は背部が標準的な値であった。ついで、20頭のネコにウェットフード (乾物当たり水銀含量1.73 mg/kg) あるいは、ドライフード (乾物当たり水銀含量0.04 mg/kg) を28週間給与し、背部の被毛中水銀濃度を測定した。測定したサンプルは全て測定下限を上回っていた。ウェットフード群のネコの被毛中水銀濃度はドライフード群より有意に高い値を示した (p〈0.01)。本試験の結果、簡便かつ高感度でネコ被毛中水銀濃度の分析が可能であること、ならびに、ネコの被毛中水銀濃度は水銀摂取量をある程度反映することが示された。
著者
松井 徹哉 武藤 厚 大塚 貴弘 永谷 隆志
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

浮屋根と液体の非線形性を考慮した大型液体貯槽の地震時スロッシング解析理論を体系化し、縮小模型による振動台実験を実施してその妥当性を検証した。さらにその成果に基づいて、2003年十勝沖地震で発生したシングルデッキ型石油貯槽浮屋根の損傷・沈没の原因究明を試み、浮屋根や液体の非線形性に起因する非線形振動モードの存在がポンツーンに過大な応力を発生させ、浮屋根を座屈・沈没に至らせる可能性のあることを指摘した。