著者
小宮 顕 岡本 百合子 仲村 和芳 岩田 幸恵 寺田 二郎 岡崎 純子 鳥海 裕子 市川 智彦 相馬 孝博
出版者
医療の質・安全学会
雑誌
医療の質・安全学会誌 (ISSN:18813658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.322-329, 2021 (Released:2022-09-07)
参考文献数
16

目的:尿道カテーテル留置に伴う尿道損傷は,報告件数が多いインシデントである.当院では同手技に伴うインシデントが多発したため,改善目的に院内教育を行った.本研究では,インシデント発生の背景要因と院内教育の効果について後ろ向きに検討した. 方法:2014年から2018年までの尿道カテーテル留置に伴うインシデントを集計し,その発生背景について検討した.2016年度中に教育訓練を行い,既存の手順書を周知した.2014年から2018年までのカテーテル使用本数と事例報告数を調査し,教育前後の事例発生率の推移を検討した. 結果:尿道カテーテル留置に伴うインシデントは39例で,そのうち尿道損傷が26例(66.7%)であった.尿道損傷の発生要因(重複有)は,確認不足20例,手技が未熟21例など,手順の遵守不足や教育訓練の不足が考えられた.またカテーテル留置目的別に見ると,侵襲的医療行為に伴うものが20/26例(76.9%)と多かった.尿道損傷の報告数(カテーテル使用本数当たりの割合)は,2014年が4例(0.064%),2015年が8例(0.089%),2016年が5例(0.056%),2017年が5例(0.054%),2018年が4例(0.041%)であった.院内教育を実施したのは2016年であり,減少傾向を認めた. 結論:尿道カテーテル留置に伴うインシデントは,手順書の遵守不足や教育訓練の不足が背景にあり,手術や検査の際に多く報告された.院内教育施行後のインシデント発生割合は減少傾向と考えられた.