著者
鳫 咲子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 = JOURNAL OF ATOMI UNIVERSITY FACULTY OF MANAGEMENT (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
no.31, pp.19-32, 2021-02

我が国では、人口政策としての少子化政策が先行し、その中で家族政策としての子育て支援政策が注目されるようになった。安倍政権下の少子化政策は、従来の「子育て支援」及び「働き方改革」に加えて、「結婚・妊娠・出産支援」を新たな内容として「希望出生率 1.8」の実現を掲げている。待機児童問題は保育所においては減少傾向にあるが、放課後児童クラブでは今後の課題となっている。子どもの貧困対策のうち就学援助には所得制限があり、支援を必要とする家庭は支援を受けていることを知られたくないという気持ちがあったり、申請が必要な個別的な子どもの貧困対策には、制度の周知が難しかったりという課題がある。給食費の無償化には、子どもの貧困対策を個別的な対策から普遍的な子育て支援策に転換し、直接子どもに給食を現物給付するという意義がある。子供の貧困対策大綱は、学校を地域に開かれたプラットフォームと位置付けて、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーが機能する体制の構築を目指している。貧困家庭の子供たち等を早期の段階で生活支援や福祉制度につなげていくためには、配置するスクールソーシャルワーカーの増員を急ぎ、勤務もフルタイムにすることが求められる。
著者
鳫 咲子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 = JOURNAL OF ATOMI UNIVERSITY FACULTY OF MANAGEMENT (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
no.32, pp.19-30, 2021-07

2020年3月、新型コロナウイルスの感染症対策のため、学校の臨時休業が急きょ要請され、学校給食もなくなった。格差は、災害をはじめとする非常時に、より深刻に現れる。コロナによる臨時休校下において、学校給食には子どもの食格差を小さくする機能があったことが顕在化した。コロナ禍・災害などの状況下では、給食を提供できない・給食費を払えないという状況も生じ、影響の長期化に伴い子どもの生活の格差も拡大する。 コロナ不況以前から、公立小中学生の15.2%が就学援助により学校給食費の支援を受けている。就学援助制度は生活保護制度と比べても一般に知られておらず、支援が必要な家庭が制度を使えていない場合がある。就学援助のように対象者を選別する支援は、予算の制約を受けやすく、制度の周知も難しく、支援を受ける人に恥ずかしい気持ちを抱かせるスティグマ(負のレッテル)の問題がある。「周囲の目が気になる」というスティグマの存在は、就学援助制度が申請による給付であるという制度の限界である。 近年、全家庭を対象とする子育て支援としての給食費補助制度を設ける自治体が増えている。給食費は年間4万円を超え、子どもの学校に関する出費のうち相当な割合を占めている。給食費の無償化も広く検討されるべきである。学校給食の無償化は、選別主義による就学援助による支援を、普遍的な現物給付に転換する効果がある。
著者
鳫 咲子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 = JOURNAL OF ATOMI UNIVERSITY FACULTY OF MANAGEMENT (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
no.34, pp.25-37, 2022-08

家庭の収入状況や保護者の健康状態が子どもの食習慣に大きな影響を与えている。そのため、困難を抱える家庭や子どもにとって、学校給食は非常に重要である。コロナ禍による子どもの食への影響も大きい。給食費未納は子どもの貧困の重要なシグナルである。未納の問題を、保護者としての責任感や規範意識とだけで片付けてしまうのではなく、不登校や虐待などと同様に貧困の兆候としてとらえるべきである。公立小中学生の7人に1人が、子どもの就学を経済的に支援する就学援助制度を利用している。制度の認知度の低さやスティグマの存在などから、この制度を利用していない家庭も相当数ある。子どもの貧困に対して、給食無償化が果たす役割は大きい。現状の就学援助による個別的な給食費などの支援は、給食無償化により普遍的に全員に実施されることが望ましい。給食費も教育を受けるために必要不可欠な支出である。今後さらに、教育無償化に向けて社会の関心が高まり、財源が確保されることが必要である。
著者
鳫 咲子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 = JOURNAL OF ATOMI UNIVERSITY FACULTY OF MANAGEMENT (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
no.27, pp.31-49, 2019-01

就学援助の現物給付化を提案する前提として、就学援助制度の現状について述べ、就学援助の課題と限界を指摘したい。これらを踏まえて、大規模災害時に所得要件が緩和されて普遍化に近づいた就学援助の効果と限界について述べる。また、学校給食費の無償化には、主として経済的な基準が設けられている就学援助による給食費支援を、誰もが受けられる制度として普遍化、現物給付化する意義が大きいことを述べる。