著者
小松 敏彦 松下 唯夫 鳴川 六司 辻 忠
出版者
大阪外国語大学
雑誌
大阪外国語大学論集 (ISSN:09166637)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.257-264, 1990-03-31

本研究は、健康な男女学生14名を対象に大学周辺の坂道(上り坂・下り坂)歩行について、エネルギー量を実測し、この値を基に運動強度、身体活動量を推定することで、日常生活での健康・体力づくりのための運動処方に役立てようとした。その結果、次のことを得た。1)各歩行での歩行速度は、男女間で平均64.9〜74.0m/分であり、上り坂は下り坂よりも小さな値を示した。2)生理的負担度を酸素需要量、RMRから捉えた。男女とも上り坂歩行において大きな値を示した。また、これらの値の男女間には統計的な有意差は認められなかった。3)身体活動量の平均値は、上り坂で男子で61.9RMR・分、女子で59.2RMR・分下り坂ではそれぞれ26.5RMR・分、25.2RMR・分を示し、往復では、男子88.4RMR・分、女子54.4RMR・分であった。4)RMRと身体活動量(RMR・分)の関係をみると、各歩行間において、男女とも有意な相関関係が得られた。また、被検者全員と全歩行とをみた場合も高い相関が得られ(r=0.98)、その回帰方程式はY^^^(RMR・分)=15.32X(RMR)-5.08であった。以上のことから、坂道歩行中のエネルギー量を測定することで、その運動強度、身体活動量を推定することができ、日常生活への身体運動をとり入れるための一つの指標を得ることができた。