著者
細川 友秀 八木 要子 鵜飼 真美
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.91-100, 2002-03-31
被引用文献数
1

私たちの研究室では,1997年以降,大学祭(藤陵祭)において『マウスといっしょ』という展示を毎年行ってきた。これは,研究室の研究内容を地域の人々に紹介するという企画である。地域社会に向けて開かれた大学が求められている現在,私達の研究室では教育大学としての特色ある地域社会との交流をめざして,この企画を実施してきた。この企画の目的は次の3つである。1)主に地域の小・中学生対象に4回生の卒業研究の一部を平易に紹介し地域社会への働きかけとする,2)卒業研究生は専門分野の研究を理解し,その内容について一般向けのプレゼンテーションと教材化のトレーニングをする,3)大学祭(藤陵祭)を地域社会との交流の機会として利用しつつ,藤陵祭への各研究室からの参加を促すことで学問的な企画を増し,藤陵祭を教育大学としての特色あるアカデミックな地域社会との交流の場としていっそう充実させる。1997年以降,各年度の研究生達は毎年改良を重ねて,いっそう目的に近づけるよう様々な創意工夫をしつつ毎年継続することにより,この企画が地域社会に浸透して定着することも目指している。こわような経過を踏まえて2000年度と2001年度も『マウスといっしょ』を企画した。展示を準備する4回生には,研究の動機,背景,実験結果を分かりやすく説明できる準備をするように指示した。テーマによっては,現代の文明社会に生活する我々の生活環境と健康との関係に注意を向け,4回生自身への環境教育と小中学生への環境教育につながるように意図して展示の準備をするように簡単に指示した。しかし,多くは4回生の自主性と創意工夫によって,しっかりとしたプレゼンテーションが準備されて実行された。2000年度と2001年度の企画にはこれまでと同様に,地域の小中学生とその保護者を中心として多数の人々が参加した。これまでどおり参加者には簡単なアンケートに答えてもらい,展示の感想,評価,研究室への要望を聞いた。保護者の回答の中にこの企画を積極的に評価する意見がふえ,また,小学生とその保護者の回答には,「毎年来ている」,「友達を誘ってきた」,「この企画を毎年続けてほしい」,「来年も子供を連れてくる」,などのコメントが多く,この企画が少しずつではあるが地域に定着してきていると思われる。今後,これまでのこの企画の経験を生かして,学校休業日となる土曜日などに地域の小中学生の希望者を対象にして生命・環境科学分野の実験教室などを企画し,子どもたちが学校の授業外で多彩な活動をする機会を提供したいと考えている。このような活動は,様々な形で大学を地域に開放し大学と地域社会との結びつきを強める,教育大学としての特色ある活動となると考える。また,2000年度と2001年度の企画では,目的の一つ,「卒業研究生は専門分野の研究を理解し,その内容について一般向けのプレゼンテーションと教材化のトレーニングをする」ことを,さらに進めるように努力した。すなわち,卒業研究のテーマがこの企画に合った初等理系や中学理学の教員養成課程の4回生が,これらの年の企画の計画・準備・実施について,それぞれの立場から実施結果の考察とまとめをおこない,各人の卒業論文の中に一つの章として組み入れた。この報告の中にそれらの章の内容が活かされている。