著者
新城 邦裕 石井 (堤) 裕子 長岡 功 梶山 美明 鶴丸 昌彦
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.494-501, 2009-12-31 (Released:2014-11-21)
参考文献数
32

目的: 食道癌はいまだに予後不良の疾患である. 肉眼的・病理組織学的に癌遺残がない根治手術例に再発・転移が起きたり, 同一病期症例で予後に差異が認められることもあり, これらの原因のひとつとして微量癌細胞の存在が示唆されている. 今回われわれはCEA mRNAをターゲットとしたリアルタイムRT-PCR法を用いて食道癌患者における骨髄微量癌細胞の検出・解析を行い, その臨床的意義について考察を行った. 対象: 対象は当科において2003年3月から2004年4月までにリンパ節郭清を伴う食道癌切除術を施行した65例である. 術後の観察期間は82-564日間 (中央値316.6日間) であった. 方法: 手術開始直後の開胸時に肋骨から骨髄を採取し, 精製してtotal RNAを抽出した. CEAmRNAの陽性コントロールにTE-9を用い, そのtotal RNAを使ってリアルタイムRT-PCRを行い検量線を作成した. それをもとに骨髄検体中のCEA mRNA量を内部標準のGAPDH mRNAの比から補正し求めた. 定量PCRは2回行い再現性を確認し, さらにPCR産物を電気泳動し疑陽性を排除した. 結果: 65例中14例 (21.5%) が骨髄検体中CEA mRNA陽性であった. 陽性群と陰性群を背景因子および病理組織学的因子から比較したが有意差はなかった. 両群の生存曲線を求めたところ, 陽性群は有意に予後が悪かった (p=0.0369). また予後因子を判断するために多変量解析を行ったところ, CEA mRNAの検出 (p=0.031) とリンパ節転移の個数 (p=0.004) が選択された. CEAmRNA陽性となる危険因子についてロジスティック回帰分析を用いて解析したが, 各因子において全て有意ではなかった. 結論: 食道癌骨髄中微量癌細胞の有無は従来の臨床病理学的予後因子とは独立した, 新たな予後予測因子である可能性が示された.