著者
吉新 通康 和座 一弘 鶴田 貴志夫 吉新 通康 五十嵐 正紘
出版者
自治医科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

米国では、簡便で正確に精神疾患をスクリーニングするNew Prime-MDなる質問票の有効性が報告されている。そこで、日本でもこのNew Prime-MDの利用可能性、妥当性が保証されれば、これを利用して、鬱病の一般プライマリ・ケア外来での受診率、プライマリケアでの場での初期症状をも明らかにに出来ると考えた。また、米国については今までPrime-MDが実施されたデーターを使用した。まず、New prime-MDの日本語訳を作成した。次に都会型診療所1ヶ所、僻地診療所、自治医科大学の地域家庭診療センターの外来患者で一定期間の各診療所の外来患者の中で1)20歳以上、2)痴呆がない、3)緊急患者でない、4)本研究に対して同意の得た患者に対して(各診療所の100人計300人の患者) Prime-MDの記入と診察を終えた患者に対して患者満足度質問票に回答してもらい、質問票の回答を分析して、Prime-MDの日本での利用可能性や各主要精神疾患の受診率や、各主要精神疾患、特にうつ病の初期症状を米国のデーターと分類比較した。また妥当性を検証するために、プライマリ・ケア医師がPrime-MDによって診断し、次にDSM-IVに精通した精神、心理領域の専門家が、上記診療を終了直後にStructured Clinical Interviewに沿って、診断し、上記の2つの診断名の一致率(κ値)を求めた。以上の研究から、以下の新たな知見を得た。1) Prime-MDの利用可能性と妥当性は、日本においても高い。2)主要な精神疾患の受診率は、プライマリ・ケアの現場でかなり高い率である。3)うつ症状の初期症状として、多彩な身体症状を呈する。4)うつの身体症状として、日本では、特異的(腹部症状、肩こり等)なものが存在する。