著者
鶴見 千津子
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学人間社会学部紀要 (ISSN:18800009)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.139-162, 2011-04-01

文章理解に影響を与えている読みの形態が、日本語習熟度に違いのある学習者の理解にどのような影響を及ぼすのかを検討した。その結果、習熟度が異なると音声化の影響も異なり、文章内容把握には上位群では黙読、下位群ではつぶやき読みにより効果があることが示された。さらに下位群ではつぶやき読みが高次の理解を援助することが要約文作成課題で示された。上位群では語句の認知に音声化を必要としないが、一方、下位群では音読が認知的過負荷になったと推測できる。さらに母語の表記体系が異なる漢字圏・非漢字圏学習者において検討した結果、つぶやき読みは非漢字圏学習者の逐語的記憶と内容把握に効果があった。非漢字圏学習者は母語における読みの音声化を日本語学習においても使用していると推測でき、漢字圏学習者は文字情報の音声化が資格情報からの入力に認知的負荷を与えていると考えられる。