著者
鶴野 隆浩
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3-12, 2003-07-31
被引用文献数
1

本稿は,社会福祉が家族を支援する際に重要となる,「家族理念」と「家族支援の理念」を再考するものである.近年,家族支援が注目されている.家族支援では,男女平等の個人尊重家族が家族理念とされている.また,家族の子育てや介護といった機能については,「日本型福祉社会論」にみられたような家族の自助ではなく,家庭内労働ととらえるなかで社会的な支援を行い,家族機能の円滑な遂行を図ることが考えられている.しかし,児童虐待など家庭内暴力の頻発のなか,現実の家族では個人は尊重されず,家族集団の維持が成員の福祉に反する事態が起きている.「家族の自助から家族への支援」への変遷でも共通していた「家族の情緒的なつながり」という前提が,問われているのである.そこで,何のために社会福祉は家族を支援するのか,その理念を再考し,新たに再構築が求められている家族福祉論のもつべき視点を明らかにしたい.