著者
鷺 忍 寳田 穂 和泉 京子 德重 あつ子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.19-28, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
16

本研究の目的は,高齢者入所施設で生活する高齢精神障害者の語りを通して,援助職者から受けるケアに関する体験を描き出し,施設における精神障害者へのケアの課題を考察することである.半構造化インタビュー調査にて,認知症を除く精神障害の診断名をもつ65歳以上の高齢者から①施設入所の経緯②印象的なケア体験③ケアへの思い等の自由な語りを得た.同意を得てICレコーダーに録音し,逐語録を作成し分析した.参加者は4施設の10名であり,参加者の語りからは次のようなケアのストーリーが明らかになった.精神障害をもつことによって自尊感情が傷ついている参加者にとって,〈一人の人〉として関心を向け,ケアしてくれる援助職者との関係性を築いていくプロセスを通して,援助職者との関係で傷ついたりしながらも,病気や生活に対する捉え方が前向きになっていった.これは〈一人の人〉として認められた感覚の獲得につながっていた.施設でのケアにおいては,入所者の自尊感情が回復できるような対人関係のあり方が重要な課題であると考えられた.