著者
寳田 穂
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.10-19, 2009-05-31 (Released:2017-07-01)
参考文献数
27

【目的】薬物依存症者への看護の実践経験を有する看護師にインタビューを行い、看護の体験を描き出し、薬物依存症者への看護の意味を明らかにする。【方法】半構造化インタビューによる質的研究。インタビュー期間:2003年7月〜9月。参加者:12名。質問:(1)看護に関連する印象的な出来事、(2)その出来事への思いなど。インタビュー総時間:700分。【結果及び考察】看護師と薬物依存症者の感情には「無意識の対称性」がみられた。看護師は、薬物依存症者に「巻き込まれない」「負けない」ように看護を継続するも、薬物をやめさせることは困難だった。看護の限界や無力に気づいた看護師は、葛藤しながらも、患者との対話を大事したコラボレイティヴな関係を築いていった。看護の限界や無力に気づくことは、看護の質の変化へのターニングとなっていた。また、薬物依存症者への看護には、患者とのコラボレイティヴな関係を通して、患者と看護師の相互成長がもたらされるという意味があると考えられた。
著者
古城門 靖子 赤沢 雪路 曽根原 純子 武井 麻子 寳田 穂
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.19-28, 2016-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
14

看護師は日常的な感情労働の代償として共感疲労に陥る危険性が高く,職場における自らの感情面での健康状態に気づき,対処する必要がある.そのためには,感情知性(emotional intelligence: EI)と呼ばれる能力が重要であると言われている.そこで本研究では,病棟チームの柱となって働いている中堅看護師を対象として言語による交流を中心としたグループを毎月1回,計10回行い,そこで語ることが中堅看護師のEI育成に有用であることを実証的に明らかにすることにした.研究参加者は総合病院に勤務する実務経験4年以上の中堅看護師7名である.結果として,参加者たちは仕事にまつわる不安や管理者への期待と不満を徐々に語りだし,それが過去の体験とつながりがあることに気づいた.こうして彼らは,グループの中で新たな他者への信頼と自信を取り戻していった.
著者
鷺 忍 寳田 穂 和泉 京子 德重 あつ子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.19-28, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
16

本研究の目的は,高齢者入所施設で生活する高齢精神障害者の語りを通して,援助職者から受けるケアに関する体験を描き出し,施設における精神障害者へのケアの課題を考察することである.半構造化インタビュー調査にて,認知症を除く精神障害の診断名をもつ65歳以上の高齢者から①施設入所の経緯②印象的なケア体験③ケアへの思い等の自由な語りを得た.同意を得てICレコーダーに録音し,逐語録を作成し分析した.参加者は4施設の10名であり,参加者の語りからは次のようなケアのストーリーが明らかになった.精神障害をもつことによって自尊感情が傷ついている参加者にとって,〈一人の人〉として関心を向け,ケアしてくれる援助職者との関係性を築いていくプロセスを通して,援助職者との関係で傷ついたりしながらも,病気や生活に対する捉え方が前向きになっていった.これは〈一人の人〉として認められた感覚の獲得につながっていた.施設でのケアにおいては,入所者の自尊感情が回復できるような対人関係のあり方が重要な課題であると考えられた.
著者
寳田 穂 武井 麻子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.32-41, 2005 (Released:2017-07-01)
参考文献数
13
被引用文献数
3

背景:各国で薬物乱用・依存に関する問題は深刻であるが、日本も例外ではない。しかし日本において、薬物依存症者への看護の意義や限界は明らかになっていない。目的:薬物依存症で精神科病院へ1回の入院を体験した人の語りを通して、入院体験の様相を描き出し、入院中の看護の意義・限界を明らかにする。方法:半構造化インタビューによる帰納的研究。5名の語りを再構成し分析した。結果及び考察:入院前、対象者は恐怖と孤立無援感の中で切羽詰まった状況にあった。入院によって、精神症状や身体状態は改善したが、処方薬や他の患者・スタッフとの関係で苦痛を体験していた。しかし、怒りや苦痛を最初から表現しなかったり、「仕方ない」と諦めた対象者が多く、孤立無援感は癒されていなかった。薬物依存症での初めての入院においては、「安全感」の回復と、「人間的つながり」の提供が必要であろう。
著者
寳田 穂 武井 麻子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.32-41, 2005-05
被引用文献数
3

背景:各国で薬物乱用・依存に関する問題は深刻であるが、日本も例外ではない。しかし日本において、薬物依存症者への看護の意義や限界は明らかになっていない。目的:薬物依存症で精神科病院へ1回の入院を体験した人の語りを通して、入院体験の様相を描き出し、入院中の看護の意義・限界を明らかにする。方法:半構造化インタビューによる帰納的研究。5名の語りを再構成し分析した。結果及び考察:入院前、対象者は恐怖と孤立無援感の中で切羽詰まった状況にあった。入院によって、精神症状や身体状態は改善したが、処方薬や他の患者・スタッフとの関係で苦痛を体験していた。しかし、怒りや苦痛を最初から表現しなかったり、「仕方ない」と諦めた対象者が多く、孤立無援感は癒されていなかった。薬物依存症での初めての入院においては、「安全感」の回復と、「人間的つながり」の提供が必要であろう。