著者
黄 宸佑 竹田 謙一
出版者
Japanese Soceity of Livestock Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.65-72, 2015-06-25 (Released:2017-02-06)

舎飼いのヒツジにおいて、羊毛食いは深刻な問題となる行動である。羊毛食いは、皮膚を傷つけられる羊毛食い受容個体ばかりでなく、羊毛食い実行個体も食べた羊毛による食滞によって死亡する可能性もある。羊毛食い行動の表現は、ヒツジのウェルフェアに悪影響を及ぼすが、この行動の発現要因については未だ明らかになっていない。ヒツジが羊毛食い行動を発現する潜在的要因として、飼育面積や給餌の作業工程などの飼育管理、あるいは硫黄や亜鉛のような必須栄養素の欠乏が挙げられているが、羊毛食い行動発現を防ぐことやその行動が発現したとき、それを制御することは難しい。本稿では、羊毛食いに関する最近の研究を概説し、現在まで示されている羊毛食いの要因について総説した。
著者
黄 宸佑 竹田 謙一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.243-246, 2016-08-25 (Released:2016-09-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では,羊毛食い発現の日内変動を2つの飼育密度条件下で調べた.供試個体を高密度(全45頭,1頭/m2)と低密度(全24頭,0.4頭/m2)条件下で供試個体の羊毛食いを10分間隔で5分間の連続観察を行い,各個体ごとの羊毛食い発現回数と,羊毛食い1回あたりのバイト数,羊毛食い発現個体数を記録した.両飼育密度条件下において,夕方の給餌後の時間帯での羊毛食い回数,バイト数が他の時間帯より有意に多かった(P<0.05)が,1回あたりのバイト数は有意に少なかった(P<0.05).また,1日あたりの羊毛食い発現個体割合は,夕方の給餌後に最も多くなった(P<0.05).以上より,ヒツジの羊毛食いは摂食行動後に多発し,摂食時における何らかの口唇への刺激不足が羊毛食い行動発現に影響している可能性が示唆された.