著者
黒岩 真弓
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

○研究目的 :学生実験において、学生に日本国菌である黄麹菌と清酒酵母の並行複醗酵による日本酒醸造という日本古来から伝わるバイオテクノロジーにふれて欲しいという意向から試験醸造免許を取得し、小仕込による試験醸造を導入することとなった。美味しく香りの良い日本酒醸造をめざすために経過過程のもろみの状態を科学的にリアルタイムで検出できることが重要である。蔵元で従来行われている日本酒分析(比重・アミノ酸度・酸度等)のためのもろみの採取量(数百mL)では小仕込醸造では支障があるために1桁以上少ない採取量での分析を行う必要がある。そのためにもろみのリアルタイムの状態を知るためのQCMセンシングシステムによる微量分析法を導入することを検討する。このQCM(Quartz Crystal Microbalance)法は抗原抗体反応や電極反応の吸着解離現象をリアルタイムに高感度で周波数変化として検出できる方法であり、同じ吸着解離現象を検出する表面プラズモン法等に比べると比較的安価な装置である。導入するに当たり、従来の分析を行うシステムの構築、もろみ状態をモデル化してのQCMシステムの検討、実際の小仕込醸造実験の検討、従来の分析法との比較を行うことでQCMシステムの最適化の検討を目的とした。○研究方法と成果 :従来のもろみ分析をおこなう分析システムを構築するために醸造協会並びにいくつかの日本酒醸造の蔵元の見学をさせていただき情報収集及び情報交換を行った。それらをもとに検討することにより、分析システムを構築出来た。小仕込醸造の蒸きょう作業の簡略化のために餅つき機の“むし”機能を用いることを検討し、有効性が示唆された。さらに、QCMシステムの検討については、もろみ状態を考慮すると、センサ部、送液部等を検討する必要が生じた。今後さらに検討していきたい。
著者
黒岩 真弓
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

○研究目的:近年、医療や生命科学の分野で生体分子間相互作用のリアルタイム解析が必要であり、このような分野では、SPR(Surface Plasmon Resonance:表面プラズモン共鳴)を用いたBiacoreによる生体分子間相互作用解析がポピュラーである。一方でSPRよりも小型・安価で使いやすいと最近注目をあびつつあるQCM(Quartz Crystal Microbalance)も生体分子間相互作用リアルタイム解析に使われている。QCMとSPRは原理の違いから、求められた解離定数に差が生じることがあるがその理由はまだよくわかっていない。また、QCMシステムによっては抗原抗体反応を行わせる前段階で周波数が安定しないということも起きている。この原因もよくわかっていない。今回は前述2種類の測定システムにより決定された解離定数等の比較検討を行い、その違いと原因を明らかにし、分子間相互作用や吸着のメカニズムを詳細に検討することを目的とした。○研究方法:今回新たに共振型QCMの共振周波数特性測定ならびに電気的等価回路定数解析を行うためのPCをコントローラとした測定システムを構築した。従来の発振型QCMを用いて抗原抗体反応の検出最適条件を検討した。SPRにおいても最適条件の検討を行った。発振型QCM、SPRの検出条件をもとにし共振型QCMにおいて抗原抗体反応の検出を検討した。○研究成果:抗原抗体反応を検出するためにQCMを用いる場合、温度の影響はもとより、バッファーならびにサンプルの送液速度、抗原濃度、抗体濃度等が測定データに及ぼす影響がかなり大きいことが示唆された。