著者
岩島 覚 黒川 啓二 田中 靖彦 黒嵜 健一 斎藤 彰博
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.298-304, 2000-04-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
15

1986年1月1日~98年9月30日までに当院にて主疾患が膜様部心室中隔欠損症と診断された764例中,大動脈弁逸脱を認めた11例(1.4%)について検討した.大動脈弁逸脱発症時年齢は9カ月~10歳(平均4歳6カ月)で2歳未満に4例みられた.発症時の心エコー所見では膜様部VSD のpeak velocityは平均4.0m/sec,%LVDdが平均113%であった.心カテは7例(のべ12回)に施行され,平均肺動脈圧は平均25mmHg,Qp/Qsは平均2.0,左右短絡は平均47%であった.逸脱弁尖は右冠尖(RCCP)単独が7例,右冠尖と無冠尖(NCCP)の両弁尖が4例で全例にARを認めた.心エコーにおいて観察されたARのcolor flow(CF)の方向は主にRCCPが単独に認められた症例においては僧帽弁前尖方向に向かい,RCCP,NCCPの両弁尖が認められた症例においては主に心室中隔方向に向かっていた.2例においてCFの方向が経過観察中に変化した.心エコーにおける逸脱弁尖の診断はRCCP単独例においては左室長軸にて観察され,RCCP,NCCP両弁尖例では大動脈弁短軸にて観察されるが,RCCP,NCCP両弁尖例は描出しにくくARのCFの方向が逸脱弁尖の診断に有用である可能性が示唆された.