著者
黒川 光流
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-14, 2012 (Released:2012-10-25)
参考文献数
22

本研究では,リーダーの管理目標および課題の困難度が,リーダー-フォロワー間葛藤に対するリーダーの対処方略およびその効果性認知に及ぼす影響を,実験室実験により検討した。実験参加者は大学生72名であり,リーダー役1名,フォロワー役2名の3名集団で意思決定課題に2回取り組んだ。1つは容易課題,もう1つは困難課題であった。また,半数のリーダーは課題志向的目標を,残りの半数は関係志向的目標を設定した。いずれの条件でも,リーダー-フォロワー間葛藤に対して,リーダーは協力を用いることが最も多く,またその効果性を最も高く認知していた。困難な課題では,課題志向的リーダーは主張や譲歩を用いることも多く,関係志向的リーダーは譲歩を用いることが少なかった。ただし,いずれの条件でも,主張の効果性は最も低く認知されていた。また困難な課題では,譲歩の効果性は低く認知されていた。各葛藤対処方略の用いられ方とその効果性認知との関連は明確にならなかったが,困難な課題では,リーダーの管理目標に応じて,リーダー-フォロワー間葛藤に対してリーダーが用いる対処方略が異なることが示唆された。