著者
黒木 勝久 橋口 拓勇 榊原 陽一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.511-519, 2020-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
49

生体内に存在する遊離の硫酸イオン(SO42−)は生体外異物や内在性ホルモン,タンパク質などさまざまな生理活性物質の機能制御に役立っている.硫酸基を生理活性物質に付加する役割をもつ硫酸転移酵素は大腸菌などの細菌から,真菌類,植物,魚類,哺乳動物など生物界に広く存在している.特に,植物モデルであるシロイヌナズナや魚モデルであるゼブラフィッシュ,哺乳動物モデルであるマウスおよびヒトでの研究が精力的に行われてきている.本稿では硫酸転移酵素の種特異的な機能や普遍的な機能に関して概説するとともに,植物,魚類,哺乳類における硫酸転移酵素の最近の知見を紹介する.また,最近発見されたα,β-不飽和カルボニルを標的とする第3の硫酸化反応に関しても紹介する.
著者
黒木 勝久 秋山 克樹 榊原 陽一
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.97-102, 2022 (Released:2022-11-02)
参考文献数
12

黒毛和牛やブランド豚肉を始めとした高付加価値食肉は系統種の交配と飼育条件の工夫により開発される.食肉偽装などの問題もあり,遺伝的・環境的要因を一度に解析できる手法を確立することで,効率的な優良育種とブランド肉の偽装鑑定への応用に期待できる.その一つとして,我々はプロテオミクス基盤技術を活用した解析を行っている.本稿では,豚肉に焦点を当てブランド肉鑑定および優良種豚選抜法への可能性を二次元電気泳動と質量分析計を用いて検討した結果を報告する.プロテオーム解析の結果,ブランド豚肉では解糖系に関するタンパク発現が大きく変動しており,環境要因が糖代謝に与える影響を見出すことが出来たと共に,ブランド豚肉を判別できるマーカータンパク質・ペプチドの候補を見出すことが出来た.さらに,優良育種に用いられるデュロック種と大ヨークシャー種の血清サンプルを用いた解析より,従来の系統的な選抜方法とは異なる新たな個体識別方法への可能性が示された.