著者
前田 浩人 林 加織 石毛 崇之 三品 美夏 渡辺 俊文 曽川 一幸
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.59-62, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
10

近年ネコ飼育頭数の増加傾向に伴い獣医臨床現場においてネコの下部尿路疾患(Lower urinary tract disease (LUTD))を治療する機会が増えつつある中で,原因の特定に至らず治療方針の決定に時間を要する症例も少なくない.中でも下部尿路疾患の2–10%の症例において細菌感染が認められる.MALDI-BioTyper Systemとrapid BACproを応用し,ネコの尿における直接菌種同定を試み,検査の感度及び時間の短縮について検討を行った.本法は,ネコの尿中における細菌種の同定分析を短時間に可能にする方法である.
著者
曽我 朋義
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.67-69, 2015 (Released:2015-10-15)
参考文献数
7
著者
豊田 優 高田 龍平 松尾 洋孝 市田 公美 Blanka Stiburkova 鈴木 洋史
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-5, 2021 (Released:2021-06-04)
参考文献数
25

ATP-binding cassette transporter G2(ABCG2)は,尿酸排泄臓器において体外へ尿酸を排泄する生理的に重要な尿酸輸送体であり,痛風・高尿酸血症の主要病因遺伝子である.最近我々は,日本人のみならず,世界的に見ても高尿酸血症・痛風の発症率が高いチェコ人症例にも着目し,ABCG2変異と尿酸関連疾患との関連を検討することで,その病態生理学的重要性を明らかにしてきた.また,in vitro機能解析を通じて,ABCG2の機能低下/欠損をもたらす変異を新たに20種類以上同定することにも成功している.ABCG2が重要な薬物動態規定因子のひとつでもあることを踏まえると,本研究を通じて得られた成果は,ファーマコゲノミクスの観点からも有益であるといえる.本稿では,個別化医療や予防医学への応用が期待されているこれら一連の研究成果について,最新の知見を交えて紹介したい.
著者
若山 正隆
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.91-95, 2022 (Released:2022-11-02)
参考文献数
8

様々な物質を一斉に分析するメタボローム解析のうち,極性低分子(アミノ酸類,有機酸類,核酸類)についてはキャピラリー電気泳動質量分析(CE-MS)法がしばしば用いられる.食品・農産物は多種多様であり,分析ターゲットなる極性低分子は呈味性,栄養・機能性等に関与することも多く,品質の維持,向上に重要な役割を持っている.しかしながら多種多様の材料を安定的に測定するには適切な前処理および分析の工夫が必要である.本報では生材料に対して固定溶媒添加および未添加条件下での破砕,および凍結乾燥材料の安定的な破砕および抽出手法を紹介し,さらにCEにおいてキャリーオーバーが少なく,電流降下が少ない試料導入並びに検量性の高い質量分析法を用いたメタボローム手法を紹介する.これらの安定的な分析手法を用いて食品,農産物に対しての品質の維持,向上に貢献できうる実験系の提示と将来像について考察する.
著者
小松 徹
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.87-90, 2022 (Released:2022-11-02)
参考文献数
8

生体内には常に数千種類を超える酵素が発現しており,特定の酵素のはたらきの異常が病気の進行と関連する例が数多く報告されている.特定の疾患と関わる酵素の機能を理解することは,病気の診断,薬の開発に直結する非常に重要なものであるが,その機能は生体内の種々の要因によって動的に制御されており,いまだに,疾患との関わりが見出されていない酵素も数多く存在している.著者らは,酵素の有する活性に着目し,生体内の様々な酵素の活性を網羅的に評価する研究手法と,見出された活性の責任タンパク質を非変性電気泳動を用いた活性評価によりプロテオーム中から高精度に発見する研究手法(diced electrophoresis gel法)を組み合わせることで,生体内の様々な酵素の機能異常を活性レベルの解析から発見し,新たな創薬標的,バイオマーカーの候補タンパク質を見出す方法論(enzymeのomics = enzymomics法)の開発を進めてきた.本論文では,酵素の活性を高感度に検出する蛍光性分子を用いた解析を中心として,その方法論と展望について紹介させていただく.
著者
木下 恵美子 木下 英司 小池 透
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.71-79, 2022 (Released:2022-11-02)
参考文献数
40

外来タンパク質を発現には,細胞あるいは無細胞系のタンパク質発現系を利用できる.目的のタンパク質がリン酸化などの翻訳後修飾を要する場合には系の選択が重要である.私たちは,ヒトSrcファミリーキナーゼ(SFKs) 8種類を,2種類の細胞ベースのタンパク質発現系と4種類の無細胞タンパク質発現系で合成し,それらのリン酸化状態をリン酸基親和性電気泳動法Phos-tag SDS-PAGEで解析した.真核細胞由来の系では,発現したキナーゼに翻訳後修飾に基づく複数のリン酸化状態が存在した.それぞれのキナーゼのリン酸化状態は,発現系によって明らかに異なった.キナーゼ活性の有無は,キナーゼと発現系の両方の特性に依存していた.これらの結果は,無細胞タンパク質合成系を利用したプロテオーム解析,特に翻訳後修飾を必要とするタンパク質の解析に対して重要な情報である.
著者
黒木 勝久 秋山 克樹 榊原 陽一
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.97-102, 2022 (Released:2022-11-02)
参考文献数
12

黒毛和牛やブランド豚肉を始めとした高付加価値食肉は系統種の交配と飼育条件の工夫により開発される.食肉偽装などの問題もあり,遺伝的・環境的要因を一度に解析できる手法を確立することで,効率的な優良育種とブランド肉の偽装鑑定への応用に期待できる.その一つとして,我々はプロテオミクス基盤技術を活用した解析を行っている.本稿では,豚肉に焦点を当てブランド肉鑑定および優良種豚選抜法への可能性を二次元電気泳動と質量分析計を用いて検討した結果を報告する.プロテオーム解析の結果,ブランド豚肉では解糖系に関するタンパク発現が大きく変動しており,環境要因が糖代謝に与える影響を見出すことが出来たと共に,ブランド豚肉を判別できるマーカータンパク質・ペプチドの候補を見出すことが出来た.さらに,優良育種に用いられるデュロック種と大ヨークシャー種の血清サンプルを用いた解析より,従来の系統的な選抜方法とは異なる新たな個体識別方法への可能性が示された.
著者
松本 俊英 川島 祐介 紺野 亮 小寺 義男 三枝 信
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.23-26, 2022 (Released:2022-10-08)
参考文献数
7

Ovarian cancer is the leading cause of death in women with gynecologic malignancies, and especially, clear cell subtype (OCCCa) shows chemoresistance and clinical outcomes at advanced stages are generally unfavorable. To identify proteins for the novel biomarker in OCCCa, we performed shotgun proteomics analysis using formalin-fixed and paraffin-embedded clinical samples. Lefty may be an excellent OCCCa-specific molecular marker and the functional rule may be the establishment and maintenance of phenotypic characteristics of OCCCa. EBP50 may have great utility in OCCCa recurrence and prognosis through inhibits apoptosis and stabilization of PARP1 activity, a DNA repair enzyme. These results have high significance and could be expected to be developed for clinical application.
著者
川井 隆之
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.19-22, 2022 (Released:2022-10-08)
参考文献数
7

In order to understand the complicated life system which is composed of trillions of cells, highly sensitive and comprehensive analysis system for single cells is needed. For this purpose, I have developed a series of microscale chemical analysis techniques such as sample collection, preparation, separation, and detection. Among them, sensitivity improvement in mass spectrometry (MS) detection has been quite important for the comprehensive bioanalysis. One approach is to perform capillary electrophoresis prior to MS detection, which can reduce the ionization suppression by its excellent separation performance and also can improve the sensitivity by online sample preconcentration methods, such as large-volume dual preconcentration by isotachophoresis and stacking. Consequently, zeptomole-level sensitivity has been realized, which has been successfully applied to single cell metabolome analysis and pharmacokinetic analysis. These results showed great potential of our technologies for contributing to the progress in the biological research fields.
著者
武森 信曉
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.53-57, 2022 (Released:2022-10-08)
参考文献数
7

Top-down proteomics, the analysis via mass spectrometry of cellular protein components as intact species without enzymatic digestion, is emerging as a powerful analytical approach to reveal entire proteoform profiles in vivo. To improve the number of proteoforms detected in top-down proteomics, high-resolution proteome fractionation prior to mass spectrometry is crucial, and interest in polyacrylamide gel electrophoresis as a sample pre-fractionation tool has been growing in recent years. This review describes a gel-based proteome fractionation workflow, which facilitates highly efficient protein extraction following polyacrylamide gel electrophoresis, and its application to sample pre-fractionation for top-down proteomics.
著者
増田 万里
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.31-34, 2022 (Released:2022-10-08)
参考文献数
6

Rapid advances in next-generation sequencing (NGS) technology over the past decade have led to a paradigm shift in cancer treatment from one-size-fits-all medicine to genomics-based precision medicine that has become more accessible in general clinical practice. It, however, has helped only less than 10% of the cancer patients who have taken genomic profiling tests. Proteomics-based rather than genomics-based approaches can capture biological processes directly contributing to cancer pathogenesis. There is, therefore, a growing need for simultaneous proteomic analysis in the next stage of precision medicine. In the future, it is expected that data from genomic, transcriptomic, proteomic, and epigenomic analyses will be integrated and complemented to more accurately understand the disease states and propose therapeutic strategies. Reverse-phase protein array (RPPA) is a proteomic technology that enables semi-quantitative, accurate, and high throughput signal profiling even in small amounts of samples. This review introduces its current status and the application to precision cancer medicine, and highlights the potential utility of RPPA technology for improving precision cancer medicine.
著者
丸山 迪代 吉村 崇
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.25-29, 2019

<p>熱帯以外の地域に生息する動物の生理機能や行動は季節によってダイナミックに変化する.我々の研究グループは,洗練された季節応答を示すウズラを用いて季節繁殖の分子機構の解明に取り組んできた.まず季節繁殖の中枢が存在する視床下部内側基底部に着目して解析を行うことで,季節繁殖の制御に重要な一連の遺伝子群を明らかにした.さらに比較生物学アプローチにより,鳥類,哺乳類,魚類の季節繁殖の制御機構の共通点,多様性を示した.現在,我々は動物の行動に季節変化がもたらされる仕組みにも興味を持っており,明瞭な季節性を持つメダカに着目して研究を行なっている.最近の研究から,メダカが季節に応じて目の色覚をダイナミックに変化させることで環境の季節変動に巧みに適応していることが明らかとなった.本稿では,我々のグループの研究から明らかになった動物の季節適応のしくみについて紹介する.</p>
著者
曽川 一幸 林 加織 村田 正太 古畑 勝則 野村 文夫
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.141-144, 2017

<p>近年,高い迅速性と正確性を有し,しかも低コストの細菌同定手法として,質量分析計が注目されている.2011年に医療機器として認定され,日本国内に約150ヶ所の病院・検査センターの細菌検査室で細菌同定のツールとして運用されている.従来細菌の同定には,主に形態学的手法(グラム染色,コロニーの形状やその大きさ)や生化学的手法が用いられている.しかしながらいずれの手法も煩雑な作業であり高い専門性が要求される.高い識別能力がある16S rRNAを指標とする手法は,多くの検体を一度に解析することが難しく,日常的に用いることは困難でありコストがかかる.質量分析計による細菌同定はサンプル調整が容易で,測定操作も簡便であり,一菌種約5分で同定結果が得られる.この特徴を活かして,煩雑な試料前処理を行わず,属や種を容易に識別することのできる手法として注目されている.</p>
著者
前田 浩人 小林 加奈 三品 美夏 渡辺 俊文 曽川 一幸
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.43-47, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
7

慢性腎臓病(CKD)は,多くのネコに発症が認められ,死因の一つとされている.獣医国際腎臓病学会(International Renal Interest Society,IRIS)の分類では,ステージI期およびステージII期におけるCKDを正常なコントロールと比較して,マーカーを用いて正確に診断することは難しい.正常およびステージI期CKDネコにおける尿中アルブミン濃度は6.0±4.5および11.2±8.4 mg/dlであり,尿中トランスフェリン濃度は0.09±0.42および0.52±0.79 mg/dlであった.ROC曲線分析に基づいて,尿中アルブミンおよび尿中トランスフェリンの感度および特異性は,現在使用されているバイオマーカーである血漿クレアチニンレベルの感度および特異度より高かった.いくつかの候補の中で,CKDの最も有望なバイオマーカーとして39.2 kDaタンパク質であるカルボキシルエステラーゼ5A断片に焦点を当てた.カルボキシエステラーゼ5Aフラグメント測定を診断に応用出来るように,我々は,尿中カルボキシルエステラーゼ5Aフラグメントを測定することを可能にする酵素イムノアッセイを開発した.ELISAの性能については,回収率(96.1–106.4%)および同時再現性(3.5–5.1%)および日差再現性(4.8–8.2%)と良好な結果であった.
著者
近藤 格
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.17-21, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
5

プロテオーム解析による早期診断のバイオマーカー開発は盛んに行われてきた.しかし,臨床的な有用性が証明されて病院で使用されているものは未だ存在しない.それは,研究室でのバイオマーカー開発の限界に起因する.研究室では,常に同数に近いがん患者と非がん患者(あるいは健常者)のサンプルが比較される.しかし,通常の健康診断であれば,圧倒的にがん患者の方が少ない.そのため,実験室の条件では感度・特異度の高い早期診断バイオマーカーであっても,現実の世界ではたくさんの間違った検査結果を導くことになる.同数に近い数で発生する事象を検出ないし予測するバイオマーカーを研究対象として設定することが,現実的である.例えば,予後,再発,治療抵抗性を予測するバイオマーカーである.病態や罹患数など検査での運用を想定した臨床的な視点からバイオマーカー開発を捉えることが,成功するバイオマーカー開発のポイントではないだろうか.
著者
木村 弥生 戸田 年総 平野 久
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.5-8, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
3

タンパク質は,翻訳後修飾(PTM)を受けて,その性質を多様に変化させる.そのため,タ ンパク質の機能を理解する上で,質量分析装置を用いた網羅的な解析によって取得できるPTM情報が重要になる.しかし,このような解析によって取得できるタンパク質のPTM情報の大部分は有効活用することができない.そこで,私たちは,PTM情報を統合し,管理するためのシステムを構築し,さらには,タンパク質のPTM情報を集めた独自データベース,ModProt(Post-Translational Modification Map of Proteome)を作成した.今後,ModProtは,PTM研究を推進するための重要なツールとして,また,PTMを標的とした個別化医療実現に向けた強力なツールとして,様々な研究に応用されることが期待される.
著者
小寺 義男
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1-5, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
14

全身を循環している血液中のタンパク質・ペプチドの組成は,体内で起こっている各種イベントを反映している.しかし,血中タンパク質の分析は高濃度タンパク質の存在,タンパク質濃度のダイナミックレンジの広さ,存在様式の多様性により,組織や細胞中のタンパク質に比べて網羅的な分析が困難である.このため,組織由来の微量タンパク質やペプチド,高濃度タンパク質に結合した成分を詳細に分析するためには,新たな試料調製法の開発が必要である.そこで,我々は血清・血漿中のタンパク質ならびにペプチドの前処理法の開発を進めているわけであるが,この開発段階において電気泳動を利用することにしている.その理由は,電気泳動によって,前処理の各段階における試料中のタンパク質・ペプチドの全体像を再現性良く迅速に把握することができるからである.本稿では,Tricine-SDS-PAGEを利用して開発した高効率な血清・血漿ペプチド抽出法の開発とその応用研究について記載する.