- 著者
-
黒木 康代
納富 恵子
- 出版者
- 日本特殊教育学会
- 雑誌
- 特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.1, pp.21-30, 2005-05-31
本研究の目的は、服濡らし・放尿の行動障害を8年間にわたり示していた、知的障害者入所更生施設の利用者に対し行った包括的アプローチにより、改善がみられた取り組みの過程を分析し、施設において実施可能な支援を検討することである。本事例では、最初は服を濡らす行動に対し行動自体の制止、放尿については、誘導と後片付けという対応を行った。しかし、それらの減少はみられなかった。その後、保護者との情報交換をもとに、介入の標的行動を「服を濡らす」ことから、その結果生じる「服を着替える」という行動に転換し、服を濡らさず居室で着替えることを形成した。また、並行して、スケジュールの調整、好み・特性を生かした療育の導入という環境に対するアプローチを行った。その結果、それらの行動障害は改善し、1年6か月の間維持された。本事例の行動障害の改善には、行動の機能の推定に加え、保護者からの情報をもとに、服を着替えるという適切な行動の形成と、環境の調整を行う包括的なアプローチが有効であったと考えられる。