著者
千々石 知子 納富 恵子
出版者
福岡教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践研究 = Bulletin of Research Center for Teaching Practice (ISSN:13480774)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.247-254, 2012-03

本研究では,第1研究として,ユニバーサルデザイン授業を効率的に行うために,これまでの授業実践を振り返り,授業の準備段階も含めた授業実施手続きを明らかにした。The Center for Applied Special Tchnologyが提案するUniversal Design for Learningのガイドラインに基づいて,第一著者の行った授業を分析し,提示,行動と表出,取り組みの3つの領域全てにおいて工夫していることが分かった。第2研究では,このガイドラインに基づいて実践した算数科学習指導が,特別な教育的支援を必要とする対象児及び学級全体の児童の学業達成,算数科への態度,学習的適応に効果があるかを対照群と比較した。その結果,対象児に学業達成率は学級平均以上の伸びを示した。また,学級全体の児童にとっては,特に算数科への取組意欲と評価判断において有効であることが示された。
著者
黒木 康代 納富 恵子
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.21-30, 2005-05-31

本研究の目的は、服濡らし・放尿の行動障害を8年間にわたり示していた、知的障害者入所更生施設の利用者に対し行った包括的アプローチにより、改善がみられた取り組みの過程を分析し、施設において実施可能な支援を検討することである。本事例では、最初は服を濡らす行動に対し行動自体の制止、放尿については、誘導と後片付けという対応を行った。しかし、それらの減少はみられなかった。その後、保護者との情報交換をもとに、介入の標的行動を「服を濡らす」ことから、その結果生じる「服を着替える」という行動に転換し、服を濡らさず居室で着替えることを形成した。また、並行して、スケジュールの調整、好み・特性を生かした療育の導入という環境に対するアプローチを行った。その結果、それらの行動障害は改善し、1年6か月の間維持された。本事例の行動障害の改善には、行動の機能の推定に加え、保護者からの情報をもとに、服を着替えるという適切な行動の形成と、環境の調整を行う包括的なアプローチが有効であったと考えられる。