著者
竹内 和航 若林 靖史 山崎 恭平 堀込 実岐 黒河内 典夫
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1466-1471, 2011

症例は58歳, 女性. 2004年(52歳時)ころより, ときどき動悸発作があり, 数回, ホルター心電図などで精査されたが, 異常は認められなかった. 2010年4月(58歳時)に動悸が24時間継続するため受診したところ, 心電図で心拍数202/分の心室頻拍(ventricular tachycardia; VT)を認めた. 同期下電気的除細動にて洞調律復帰としたうえで, 精査加療目的に入院となった. 入院中に行った前斜角筋リンパ節生検で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫と多核巨細胞の組織像を認めた. また, 心臓超音波では心室中隔基部の菲薄化と左室収縮不全, 心尖部心室瘤とその内部の血栓を認めた. 胸部X線では両側肺門部リンパ節腫脹を認めた. <sup>99m</sup>TCシンチグラフィでは心室瘤に一致して取込み欠損, ガドリニウム造影MRIでは心筋中層の遅延造影を認めた. 1臓器にサルコイドーシスに特徴的な組織像を認め, かつ心臓病変を強く示唆する臨床所見も満たし, 心サルコイドーシスの診断となった. アミオダロン内服中の心室頻拍誘発試験で非臨床的VTではあるものの, 約11秒間のVTが誘発された. 植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)植え込み術を施行し, プレドニゾロン内服も追加し, その後, 良好な経過を得ている.<BR>心サルコイドーシスでは, 心尖部に心室瘤を合併するのは稀である. また, 本例ではVTの起源は心室瘤周囲とは断定できず, 複数の起源であることも考えられた. よって, 治療としてカテーテルアブレーションではなく, ICD植え込み術による治療を選択した.