著者
黒瀬 にな
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-04-28

近代法システムの前提を取り払った時、訴訟は限りなく陳情に近接するものの、すべてが政治に回収されうる訳ではなく、〈法〉に訴えるという行為は多かれ少なかれ「規範的な正しさ」を指向すると考えられる。日本の平安時代~南北朝時代においては、所領支配や職階制に基づく人的・制度的関係をたどって出訴するのが一般的であり、このことは研究上「本所法廷主義」と命名され、裁判管轄原則と捉えられている。その一方で、当時の訴訟では縁故関係が多大な役割を果たしており、正式な帰属関係と非正式な縁故関係の両者の関連性が問題となる。本研究はこの点に着眼し、訴訟手続に係る正当性の日本中世固有のあり方を明らかにするものである。