著者
黒田 聡史 佐々木 伸雄 伊藤 直之 村岡 登
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.923-927, 2014-12-20 (Released:2015-01-20)
参考文献数
14

7カ月齢の日本猫が,左前肢の跛行と掌球部の石灰沈着に伴う白斑を主訴に来院した.血液検査では持続的な高リン血症がみられたが,血漿カルシウム値は正常範囲内であった.また,腎不全,甲状腺機能亢進症及び原発性上皮小体機能低下症は認められず,当初は血清中のビタミンD値が高値を示した.リン制限食給与並びにリン吸着剤の投与により,血漿無機リン(iP)値は有意に減少し,カルシウム・リン溶解度積も減少した.また,ビタミンD値は正常値に復した.しかし,血漿iP値は依然正常範囲より高値であった.跛行は改善したものの,掌球の石灰沈着症は初診から2年半以上にわたり観察された.本例の高リン血症の原因は明らかにできなかった.