著者
石田 詔治 黒田 誠一郎 吉永 和正
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.103-109, 1990

西宮市消防局,新明和工業と防振ストレッチャーを共同開発し,予備実験,実車搭載走行で振動測定実験を行った。生体は1~14Hzの周波数域で全身振動に暴露されると,各種の生体反応や臓器共振をきたす。したがって,生体の全身振動を軽減するには,この周波数域で車体からストレッチャーへの振動伝播を軽減する必要がある。加振台上での予備振動実験において,ストレッチャーへの振動伝達率は25~50%未満であった。テストローラ上での実車走行実験を時速20, 50, 80kmにおいて,床面とストレッチャー上の振動レベル80%上端値を計測した。ストレッチャー上の頭部,胸部の高さに相当する部位での80%上端値は速度の影響をほとんど受けなかった。床面と比較した80%上端値は頭部で2~18%,胸部で10~37%と,いずれも低値を示した。しかし,胸部の高さでの振動伝播の軽減の程度は,頭部に相当する部分と比較して低値であった。一般道路での実車走行実験は,時速40kmの定時走行で,床面とストレッチャー上のパワー・スペクトル密度(以下PSD)を測定した。1~14Hzの周波数域でストレッチャー上の頭部,胸部に相当する位置で測定されたPSDは,全周波数で床面より低値を示した。すなわち,この防振ストレッチャーは一般道路上の実車走行でも,床面と比較して防振ストレッチャー上の振動が少ないことが実証できた。しかし,胸部の高さでの振動伝播の軽減の程度は,テストローラ上での結果と同様,頭部に相当する部位と比較して低く,まだこの防振ストレッチャーに改良の余地のあることを示唆した。