- 著者
-
黒部 利次
- 出版者
- 金沢大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1996
情報機器や精密機器に搭載されている硬脆性材料の部品の加工の精度の向上とコストの低減を目指して、磁性流体を利用した研削型超精密研磨法の開発研究を行っている.本研究は,磁性流体に砥粒を懸濁した磁性スラリーを用いることにより,加工液を溜めるための研磨槽や加工物の移し替えを必要としない研削加工型の最終仕上げ法の開発を指向している.加工装置は,精密型自動XYステージおよび2軸パルスコントローラを用いて,同時2軸制御型の加工実験装置であり,円盤状ポリシャと加工物ホルダを回転させるための2つの直行した回転軸から構成されている.ポリシャ内部には永久磁石を配置して,磁性スラリーをポリシャ外周表面上に保持できるようになっている.また,加工物側回転軸を固定してあるXYステージを速度制御して精密な送りを行ない得るようになっている.硬脆材料であるガラス,シリコンウエハを加工物とし,本研磨法の基本的特性を調べるために,研磨能率と仕上げ精度について研磨回数,クリアランス,磁場強度と磁場勾配の影響を検討した.また,送り速度を制御して加工物を送りながら研磨することによって面創成研磨の加工性能を検討した.さらに本研磨法による鏡面創成への適用について検討した.その結果,水ベース磁性流体とケロシンベース磁性流体では,加工量の大きさがことなること,研磨能率は加工点付近の磁場強度と磁場勾配を変えることによって制御し得ること,また,表面粗さは,使用する砥粒径に強く依存することも明らかとなった.本研磨法を平面創成に適用した実験的検討の結果,加工物の回転中心からの距離に応じて送り速度を制御して研磨を行うことによって精密な平面創成ができること,さらに,磁性スラリーとして粒径の大きい砥粒による研磨の後,小さい粒径の砥粒によって研磨を繰り返すことによって,粗面を高能率で鏡面に仕上げることができることを示した.