- 著者
-
渕野 航平
黒部 正孝
松原 広幸
鈴木 俊明
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床神経生理学会
- 雑誌
- 臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.1, pp.8-13, 2021-02-01 (Released:2021-02-01)
- 参考文献数
- 28
短母指外転筋に対する圧刺激強度が脊髄前角細胞の興奮性に与える影響について検討した。右利きの健常成人25名を対象とした。右短母指外転筋上の皮膚面に対して垂直に30秒間圧刺激を与え, その前後に右手関節部で正中神経を電気刺激し右短母指外転筋の筋腹上からF波を記録した。圧刺激の強度は, 圧刺激により疼痛を訴えた強度である痛覚閾値強度 (平均14.7±7.2 N) および痛覚閾値の50%強度 (平均7.6±4.1 N) の2種類とした。F波の分析項目は, F波出現頻度および振幅F/M比とした。痛覚閾値強度での圧刺激後は, 圧刺激前と比較してF波出現頻度 (刺激前: 47.3±16.7%, 刺激後: 48.1±15.9%) および振幅F/M比 (刺激前: 1.13±0.49%, 刺激後: 1.11±0.51%) に変化を認めなかった。痛覚閾値の50%強度での圧刺激後は, 圧刺激前と比較してF波出現頻度 (刺激前: 50.8±18.5%, 刺激後: 41.6±17.1%) および振幅F/M比 (刺激前: 1.21±0.61%, 刺激後: 1.02±0.48%) が低下した (p<0.05) 。本研究から, 短母指外転筋に対して痛覚閾値強度の圧刺激では脊髄前角細胞の興奮性は変化しないが, 痛覚閾値の50%強度で圧刺激を行った後, 脊髄前角細胞の興奮性が低下することが示唆された。