著者
齊藤 千紗 正井 克俊 杉本 麻樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1681-1690, 2021-10-15

笑いは日常生活で頻繁に観察される表情の1つであり,非言語コミュニケーションに不可欠な役割を果たす.笑いには可笑しさや喜びといった快感情から生じる自然な笑いと快感情をともなわない作り笑いがある.この2つの笑いをコンピュータが適切に推測することができれば,ユーザへの理解が深まり,また,インタラクティブシステムに応用可能である.本稿では,日常の使用に適した形状である眼鏡型の装置に搭載した反射型光センサアレイを用いて,2種類の笑いの識別可能性を検証する.実験では,12人の参加者が動画を視聴して生じた自然な笑いとコンピュータ上の指示による作り笑いの2種類の笑いのデータを収集した.センサから得られた反射強度の分布である幾何学的特徴と時間軸の時間的特徴に対してサポートベクタマシンを適用した結果,ユーザ依存の学習の場合,12人の実験参加者で平均精度が94.6%であった.これはデータを収集した際の表情変化の動画から人間が判定した場合(90.2%)よりも高い精度であった.さらに,畳み込みニューラルネットワークを用いた個人間の学習においても82.9%であった.