- 著者
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齊藤 博英
野村 慎一郎
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2011
生命の起源において、核酸などの化学物質から、進化する生命システムがいかにして誕生したのかという問題の解決は、生命科学が目指す大きな目標の一つである。天然に触媒分子として働く RNA が発見されて以来、遺伝子と代謝(触媒)機能の両者を兼ね備える生体分子として、RNAは生命の起源研究において注目されている。特に、RNA 同士の連結反応を触媒するリガーゼリボザイムの存在が生命初期の進化に非常に重要であると考えられている。本研究では、人工 RNAシステムを基盤として、自己複製反応を触媒する人工酵素をデザインし、人工細胞モデルシステムを創出することを目指した。具体的には人工リガーゼリボザイムを用い、RNA 自己増幅系のモデルを新たに設計・構築することにより、新観点から RNA ワールド 仮説の実験的検証をおこなった。この知見を基に、RNA 構造モチーフを利用した新規 RNA 自己複製システムモデルを設計・構築した。さらに設計した RNA 分子から構成されるμm サイズのコンパートメント(小胞)の構築を試み、RNA のみからなる機能性構造体の創出に向けて前進した。