著者
齊藤 鉄也
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.315-322, 2018-02-15

本論文では,古典籍に用いられている仮名字母の出現傾向を利用し,その資料の書写者の推定や年代の推定を行った調査結果を報告する.具体的には,書写者や年代ごとに資料を分類することを目的に,同音の仮名字母の出現頻度率を特徴量とし,藤原定家とその近親者や側近の人物が書写した資料の調査を行った.その結果,定家筆の一部の資料が,他筆の資料と分類できる可能性があること,定家筆の資料の中では,年代が近い資料が分類できること,が明らかになった.本提案手法により,古典籍の資料の書写者の推定や年代の推定を行い,古典籍の研究の基礎となるデータの蓄積とそれを活用した研究の進展が期待できる.
著者
齊藤 鉄也
雑誌
じんもんこん2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.89-96, 2017-12-02

本論文では,源氏物語の短い本文を持つ巻の,写本本文の仮名のNgram を用いた系統分類の調査結果を述べる.表記が異なる本文データのNgram を用いた巻ごとの分類結果からは,3gram から5gramの調査データで,青表紙本系統と河内本系統の分類ができること,系統分類が明瞭な巻と不明瞭な巻があることを明らかにした.加えて,文学や文献学の系統分類の研究成果と本調査結果を比較し,その分類結果が一致している点があることから,本調査方法に一定の有効性がある可能性を示した.
著者
齊藤 鉄也
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.157-164, 2019-12-07

本論文では,写本に出現する全仮名字母の分布を比較し,大島本源氏物語の書写者の検討を試みる.調査対象とした写本は大島本源氏物語と,飛鳥井雅康筆とされる『辟案抄』,『伊勢物語』,書陵部蔵三条西家本『源氏物語』「早蕨」,高松宮家本『源氏物語』「朝顔」である.写本ごとの仮名字母の分布を,統計学手法を用いて比較した結果からは,飛鳥井雅康筆とされる写本間の距離は互いに近いこと,大島本53巻の中には,飛鳥井雅康筆写本と同程度に距離が近い写本は存在しないこと,を明らかにした.加えて,「宮河印」のある大島本源氏物語写本の一部は互いに距離が近いことを明らかにした.