著者
李 康穎 Biligsaikhan Batjargal 前田 亮 赤間 亮
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.261-266, 2019-12-07

落款印は書や絵画の真贋を鑑定する上で重要な要素であるだけではなく,書画との調和美が意識され,芸術的な価値もある.落款印を対象にした自動認識システムの構築により,専門家や愛好家に対してこれらのコレクションが持つ背景情報の理解を支援するための効率的なツールを提供できる.本研究では,落款印画像を用いた検索システムの構築に注目し,複数のオープンデータの活用を考慮した浮世絵関連情報の抽出を試み,浮世絵コレクションの検索に新たな視点を提案する.
著者
青池 亨 木下 貴文 里見 航 川島 隆徳
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.115-120, 2019-12-07

国立国会図書館電子情報部電子情報企画課次世代システム開発研究室(次世代室)では,機械学習技術を図書館サービスに取り入れ,応用することで,資料の検索可能性と提供可能性の拡張を実現するべく調査研究活動に取り組んできた[1].また,これらの研究成果を活用したサービスを一般に利用可能な形で提供する場として,2019 年3 月に「次世代デジタルライブラリー(https://lab.ndl.go.jp/dl/)[2][3]」を公開した.他方,国立国会図書館のデジタル化資料の利活用促進や学術コミュニティへの貢献の観点から,外部の研究者やエンジニアが研究・技術開発用途に利用可能なデータセットを公開することも大きな意義がある.本論文では,国立国会図書館デジタルコレクションのデジタル化資料を活用して作成・公開したデジタル化資料のレイアウトのデータセット(NDLDocL)について,その特色や先行する他機関のデータセットとの相違点を紹介する.また,実際の構築過程における検討事項や開発したアノテーションツールの紹介と,現時点で想定している活用方法のアイデアについて述べる.
著者
北本 朝展 カラーヌワット タリン Alex Lamb Mikel Bober-Irizar
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.223-230, 2019-12-07

機械学習(ディープラーニング)を活用したくずし字OCRの研究が盛り上がりを見せている。こうした研究をさらに後押しするために、我々は世界最大の機械学習コンペプラットフォームであるKaggle上で、2019年7月から10月にかけて「くずし字認識」コンペを開催した。本論文はこのコンペの準備・経過・成果の各段階について、実際に行ったこととそこから得られた教訓をまとめるとともに、人文情報学の分野で機械学習コンペを活用することの価値を検討する。
著者
福田 一史 三原 鉄也 大石 康介 細井 浩一
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.77-84, 2019-12-07

立命館大学ゲーム研究センターは16,000点からなるビデオゲームを中心とする所蔵資料の書誌データベース「RCGS Collection 試作版」を開発・公開した.本研究では,システムの機能要件を定義し.開発に用いたOmeka Sの有効性を検証する.本実装から,ブラウザ向けデータベース機能が充実しているが,LODのデータ提供機能に課題があることが示された.
著者
佐藤 いつみ 高久 雅生
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.245-252, 2019-12-07

無形民俗文化財は,人々の生活の推移を示すものであり,その情報も含めて後世に残していく必要がある.本研究では,無形民俗文化財情報の構造化する手法を提案し,その適用を図ることを通じて,その統一的な管理とアクセス性向上を目指す.構造化を行うにあたり,CIDOC CRMに基づき,無形民俗文化財情報のLinked Data化を行った.データモデルでは,中心となる無形民俗文化財のエンティティに対し,イベント情報に関する3種類のエンティティ,「開催イベント」「発祥記述イベント」「登録イベント」を関連づけた.また,無形民俗文化財のカテゴリーの階層関係をSKOSで表現した.作成したデータモデルには,インスタンスとして無形民俗文化財の一つである「秋田の竿燈」を当てはめ,作成したデータセットについて議論する.
著者
山田 太造 井上 聡 山家 浩樹
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.3-10, 2019-12-07

本論文では,歴史データを対象に,史料データの収集・蓄積・分析・提示・提供といったデータ流通基盤の整備を目的とし,史料や派生する歴史データを蓄積していくために構築を進めたデータリポジトリと,そこに蓄積したデータを分析し提示・提供していくための手法について述べる.
著者
齊藤 鉄也
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.157-164, 2019-12-07

本論文では,写本に出現する全仮名字母の分布を比較し,大島本源氏物語の書写者の検討を試みる.調査対象とした写本は大島本源氏物語と,飛鳥井雅康筆とされる『辟案抄』,『伊勢物語』,書陵部蔵三条西家本『源氏物語』「早蕨」,高松宮家本『源氏物語』「朝顔」である.写本ごとの仮名字母の分布を,統計学手法を用いて比較した結果からは,飛鳥井雅康筆とされる写本間の距離は互いに近いこと,大島本53巻の中には,飛鳥井雅康筆写本と同程度に距離が近い写本は存在しないこと,を明らかにした.加えて,「宮河印」のある大島本源氏物語写本の一部は互いに距離が近いことを明らかにした.
著者
岸本 征将 北 直人 李 亮 長谷川 恭子 田中 覚
雑誌
じんもんこん2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.97-102, 2019-12-07

本研究では最先端のバーチャルリアリティ技術やジェスチャ認識技術を用いる事で,有形文化財である「モノ」だけではなく,無形文化財といった「コト」を対象とした文化や伝統そのものもデジタルアーカイブ化が目標である.研究内容は祇園祭の粽(ちまき)投げを対象として,デジタルアーカイブ化された有形文化財を活用した仮想空間内でVR ヘッドマウンドディスプレイ(VRHMD)とジェスチャ認識技術を駆使する事で現在では行われていない粽投げの体験が可能なコンテンツを開発した.この様なシステムをデジタルミュージアムと捉え,従来のミュージアムでは体験出来なかった疑似体験によってもたらされる道具の使われ方や当時の様子,習慣等の推察やモノの本質的な理解が可能となった.