著者
齋藤 万里恵
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

近年日本では、人口急減・超高齢化の課題に直面しており、特に仕事や生活の利便性を求めて都市部への人口流出が多い地方部で深刻になっている。一方で地方移住といった田園回帰の動きもみられるようになってきた。中には、地域のコミュニティの再生や交流人口の拡大といった地域の課題解決に積極的に取り組む者も現れ、地方移住者による地域振興への寄与が期待されている。本研究では、地方移住者の視点から、移住者が地域振興に関わる動機・プロセスを調査し、移住者による地域振興を推進する方策について明らかにすることを目的とする。宮城県内で地方移住者にヒアリング調査を行った結果、移住者は移住当初は地域との交流は少ないが、仕事などを通じて徐々に地域住民との交流が生まれ、地域への高い関心から、地域振興に関わるようになることが分かった。また地域振興に関わることにより、地元住民との交流が深まり地域愛着が増すことにより、定住意識にも影響を与えていることが分かった。これらの結果から、「移住者と地元住民の交流」が移住者による地域振興を推進する方策として重要であることが明らかになった。特に移住者側は地域の風習や伝統を意識すること、地元住民は移住者の意見や企画を受け入れ協力する姿勢が必要であると考えられる。 また、地元の自治体や企業などの第三者のサポートも大切であることが分かった。具体的には、移住者と地元住民の交流の機会を提供したり、移住者が活動しやすい支援体制を整えたりするなどの役割があると考えられる。以上のことから、移住者と地元住民の交流を軸に、移住者と地元住民、自治体・地元企業が連携することで、移住者による地域振興を推進し、地方の活性化を行うことが可能であると考える。