著者
清田 洋正 五十嵐 渉 齋藤 亜紀 古川 博之 星川 浩輝 桑原 重文
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2015

<p> Enacyloxin (ENX)類(Fig. 1)は、赤パンカビNeurospora crassaの培養上清で培養した酢酸菌の一種Frateuria sp. W-315株の生産する、珍しい鎖状ポリエン-ポリオール型の抗生物質である[1]。そのポリエン構造のため光に不安定であり、渡邉敏彦博士による発見報告以来、当研究室での全立体構造決定まで25年を要した[2]。中でもENX IIa (2) は抗グラム陽性・陰性細菌活性を示し、その作用機構はリボソームelongation factor-Tuに作用するタンパク質合成阻害によることが知られている[3]。酵母やカビには抗菌活性を示さないことからも選択的な抗菌剤としての開発が期待される。ENX IIaの他、ENX oxidaseによる酸化の前駆体であるENX IVa (1) やdecarbamoyl ENX IIa など様々な類縁体が単離されている。</p><p>Fig. 1. エナシロキシン (ENX) 類の構造と逆合成解析</p><p> 我々はENX類の創薬への展開を目指して全合成研究を行っている[4]。ENX IIa (2) の逆合成解析をFig. 1に示す。全体をポリオールC16'-C23'部A、C9'-C15'部B、 ポリエンC1'-C8'部C及びシクロヘキサンカルボン酸部Dに分けた。Aの3箇所の不斉点についてはd-アラビノースを利用し、Bはd-グリセルアルデヒド=アセトニドからクロチルホウ素化で導くことにした。ポリエン部C はWittig反応で調製し、シクロヘキサンカルボン酸部Dについては、d-キナ酸の立体化学と位置選択的なアシル化反応を利用する。AとBの連結では、ジアニオン型求核試薬と酸クロリドとのカップリング反応を計画した。BCD間についてはHorner-Wadsworth-Emmons反応を用いることにした。</p><p>1)ポリオールC16'-C23'部の合成(Scheme 1)</p><p> d-アラビノースをラクトン誘導体3に導き、Wittig-Horner反応により4を経てE-アルケニル部分を増炭した5を得た。4のカルボニル基の還元は非選択的であったが、塩基処理で生じたオレフィンはE-体のみであった。トシラート6を経てエポキシド7を調製後、C16'-C23'部となるスルホンA1を合成した[4b]。また、相当するブロミドA2、ホスホニウム塩A3も調製した。</p><p>Scheme 1. C16'-C23'部の合成</p><p>2)ポリオールC9'-C15'部の合成(Scheme 2)</p><p> d-グリセルアルデヒド=アセトニド9からクロチルホウ素により4炭素増炭してアルコール10を得、酸触媒を用いて1,2-アセトニド部分を2,3-位に掛け替えて11とした[5]。11から相当する酸クロリドB1を調製した。一方、11の二重結合をオゾン分解した後、LiCHCl<sub>2</sub>を用いて増炭[6]、アルキノール12及び酸クロリドB2に導いた。また、12のアルキン部分をRed-Al/NCSを用いて塩素化し、酸クロリドB3を得た。</p><p>Scheme 2. C9'-C15'部の合成</p><p>3)C9'-C15'部とC16'-C23'部のカップリング反応(Scheme 3)</p><p> 予備実験において、相当するスルホン(O-EE-A1)由来のモノアニオンでは、アルデヒド、酸クロリド何れともカップリング体は得られなかった。そこで求核性の向上を狙い、ヒドロキシスルホンA1からジアニオンを調製、酸クロリドB2を加えたところ、目的物A1-B2が10%の収率で得られた。一方、ホスホニウム塩A3を用いても目的物は得られなかった。更に求核性を向上させるため、共鳴安定化していないヒドロキシアルキ</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
齋藤 亜紀
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.169-176, 2018 (Released:2019-03-31)
参考文献数
22

本稿は佐藤忠良の教育について再考するために,佐藤の造形指導の意図がどのように授受されたのか,インタビューをもとに検討したものである。インタビューは東京造形大学の草創期に佐藤の教育を受け,後に彫刻家となった5人に協力を依頼した。佐藤は,この大学は具象を学ぶ学校であることを明言し,教育の目標を「高度な精神と技術1」を備えた自律した人間形成と考えていた。表現を試行するために身体を鍛えること,〈自然〉を自分の目と手で捉える訓練をさせることが第一義であると考えた。建学当初,この意図は学生と共に大学の歴史を作って行こうとする情熱によって様々に試行される。しかし,人体像を通して写実を学ぶことと〈佐藤の造形〉は混同され,造形指導の本来の意図とは異なり,齟齬を生じさせていった。〈佐藤の造形〉という表層的な問題と佐藤の造形指導の真の意図から,その授受を検討した。