- 著者
-
佐田 登志夫
齋藤 宏暢
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.122, no.6, pp.539-547, 2003 (Released:2003-11-20)
- 参考文献数
- 34
- 被引用文献数
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5
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アゼルニジピン(カルブロック®)は高血圧治療薬として新規に開発されたジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬である.本剤は,L型カルシウムチャネルを抑制することにより血管を拡張させ降圧効果を示す.自然発症高血圧ラット(SHR)にアゼルニジピンを単回経口投与すると,発現が緩徐で持続性の降圧作用が認められるが,降圧に伴う反射性頻脈の程度は同じクラスの類薬に比べ軽度であった.SHRに長期投与すると,安定した降圧作用が認められ,心拍数は軽度ではあるが低下した.イヌにおける検討から,アゼルニジピンは類薬に比べ,圧受容体反射を生じにくく,陰性変時作用が強いことが示された.SHRにおいて血漿中薬物濃度と降圧作用の関係を検討したところ,降圧作用は血漿中薬物濃度の上昇に遅延して発現し,血漿中薬物濃度が低下した後も持続することが示された.また血管壁のマイクロオートラジオグラフィーから,アゼルニジピン分子は平滑筋層に徐々に移行し,そこに長時間留まることが確認された.摘出血管標本において,アゼルニジピン添加後,カルシウム拮抗作用は緩徐に発現し,栄養液中から薬物を除去した後も長時間持続することが示された.これらのデータは本剤の作用持続性にその高い血管組織親和性が関与することを示唆する.降圧作用以外に,本剤には利尿作用,抗狭心症作用,心保護作用,腎保護作用,抗動脈硬化作用が動物モデルで観察されている.臨床試験においても,高血圧患者においてアゼルニジピンは1日1回の投与により24時間安定した降圧作用示すこと,心拍数には影響を与えないもしくは軽度低下させること,カルシウム拮抗薬に特有の頭痛,顔面紅潮,立ちくらみ,動悸などの有害作用が少ないこと,血中から薬物が消失した後も降圧作用が持続することが確認されている.これらの特徴を有するアゼルニジピンは新世代のカルシウム拮抗薬として高血圧治療のために有用である.