著者
關橋 薫 齋藤 宏美 佐々木 有
出版者
日本毒性学会
雑誌
Journal of toxicological sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-8, 2002-12-25

甘味料ステビア抽出物の安全性試験の一環として,ステビア抽出物およびその代謝物であるステビオールの遺伝毒性をコメットアッセイで評価した。ステビオールはin vitroとin vivoの両方で,ステビア抽出物はin vivoで検討した。in vitroコメットアッセイではヒトリンパ芽球細胞株TK6およびWTK-1を用いた。ステビオールの1000μg/mlでは著しい細胞生存率の低下がみられたことから,生細胞数が70%を下回らない濃度としてラット肝由来の代謝活性化系の有無に関わらず500μg/ml以下で評価した。代謝活性化系の有無に関わらず500μg/ml以下で統計学的に有意なDNA損傷の増加はみられなかった。以上の結果から,本試験条件下において,ステビオールには代謝活性化系の有無に関わらずin vitroでDNA損傷誘発性はないと考えられた。ステビア抽出物およびステビオールの致死用量は2000mg/kg以上であることから,最高用量を2000mg/kgとしてマウスに単回強制経口投与し,3および24時間後に肝,腎,胃,結腸,精巣でDNA損傷性を検討した(ステビア抽出物では肝,胃,結腸のみ)。ステビア抽出物およびステビオール投与群では,いずれの臓器においても統計学的に有意なDNA損傷の増加はみられなかった。以上の結果から,本試験条件下において,ステビア抽出物およびステビオールには評価対象としたマウスのいずれの臓器に対してもDNA損傷誘発性はないと考えられた。