著者
齋藤 早紀子 小林 吉之 河内 まき子
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.228, 2023 (Released:2023-11-23)
参考文献数
23

若年女性の歩容から受ける美的印象に対する観察者の性別の影響を調べた.はじめに,歩行動作の印象を具体的なイメージとして喚起するような評価用語を検討した.重回帰分析の結果,色っぽい,スムーズである,バランスが悪い,が選定された.20 の歩行動作に女性のデジタルマネキンをあてはめた動画を作成し,各用語がどの程度当てはまるかを5 件法で回答させた.その結果,同じ歩容から受ける色っぽいという印象は,男性観察者群の方が女性観察者群よりも有意に高い評価得点を示し,スムーズである,バランスが悪いには有意差がなかった.さらに,色っぽいという用語のみ,男性観察者と女性観察者の評価得点間に有意な相関が見られなかったことから,男性観察者と女性観察者では色っぽいと感じる女性の歩容が異なるものといえる.そこで,提示画像に用いた1 歩分の関節角度を主成分分析によって分析し,動作特徴を抽出し,「色っぽい」という語の評価得点との関連を調べた.「色っぽい」という語の評価得点は,男性観察者では第5 主成分得点との間に有意な負の,女性観察者では第3 および第5 主成分得点との間に有意な負の相関がみられ,男性観察者と女性観察者では,色っぽいという印象をうける女性の歩行特徴が異なっていた.また色っぽいという印象をうける女性の歩容は,先行研究とは異なり,必ずしも歩行者の腰部の動きが大きいこととは関係していなかった.