著者
渋井 佳代
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.205-209, 2005 (Released:2007-10-23)
参考文献数
23
被引用文献数
6 1

女性は,月経,妊娠・出産,閉経を通して,視床下部-下垂体-卵巣系の内分泌環境が大きく変動する.それに伴い,気分の変調や睡眠が変化することはよく知られている.月経前には,いらいら,抑うつ感を伴った日中の眠気の増加が特徴的である.妊娠中に関しては,妊娠前期に過眠がみられるが,妊娠中期には比較的安定し,妊娠後期に夜間不眠が多く経験される.睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群が発症する場合もある.産褥期には夜間睡眠の分断化が余儀なくされる.更年期には,ほてりやのぼせなど自律神経症状がきっかけとなる夜間不眠がみられる.それぞれのライフステージにおけるホルモン動態を正しく理解し,適切な対処をする必要がある.
著者
河島 則天
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.17-21, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
12

1 人の症例を対象として細やかな観察や評価を行い,症状や病態を把握するプロセスは,医学・リハビリテーション領域での臨床現場での日常そのものである.数ある症例のうち,たとえば極めて珍しい新規な症状や病態に接したとき,あるいは新規かつ特異性のある介入方法を初めて試みる場合などには,たとえ1症例であっても観察記録やデータを論文として公表することに非常に大きな意義がある.本稿では,医学・リハビリテーション領域における単一症例研究の意義と位置づけについて,具体的な事例を挙げながら解説,考察していく.
著者
藤井 進也
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.79-85, 2012 (Released:2016-04-15)
参考文献数
47
被引用文献数
1

音楽家は,日々弛まぬ練習を積み重ね,初心者にとっては大変困難なリズム運動の生成と同期を実現することができる.これら音楽家の身体運動には,巧みなリズム運動の神経制御メカニズムや,学習に伴う中枢神経系の適応的変化の仕組みを解くための鍵が多く潜んでいる.本稿では,世界最速ドラマーをはじめとした音楽家の運動制御研究について紹介し,高度なリズム運動の生成と同期を実現する音楽家の身体運動制御戦略について解説する.
著者
杉田 昭栄
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.143-149, 2007 (Released:2008-08-31)
参考文献数
24
被引用文献数
4 1

鳥類は,視覚が発達した動物である.彼らは,すみやかに遠くに焦点を合わせることも,近くのものに焦点を合わせることも自由に行なえる.また,色の弁別能力も高い.このように視覚に優れる仕掛けは眼球のつくりにある.その優れた視力は,水晶体および角膜の形を変え,高度にレンズ機能を調節することにより行なう.このために,哺乳類とは異なるレンズ系を調節する毛様体の特殊な発達や哺乳類には無い網膜櫛もみられる.また,網膜の視細胞には光波長を精度高く選別する油球を備えているばかりでなく,各波長に反応する視物質の種類がヒトのそれより多い.したがって,ヒトが見ることのできない紫外線域の光波長を感受することもできる.さらには,この視細胞から情報を受けて脳に送る神経節細胞もヒトの数倍の数を有する鳥類が多い.このような仕組が鳥類の高次の視覚を形成している.
著者
金谷 翔子 横澤 一彦
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.69-74, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
11

自分の身体やその一部が自分のものであるという感覚のことを,身体所有感覚と呼ぶ.この感覚がどのようにして生じ るのかを調べることは非常に困難と考えられていたが,近年,ラバーハンド錯覚と呼ばれる現象の発見により,手の所有感覚の生起機序について多くの知見が得られた.この錯覚は,視覚的に隠された自分の手と,目の前に置かれたゴム製の手が同時に繰り返し触られることにより,次第にゴム製の手が自分の手であるかのような感覚が生じるというものであり,視覚情報と触覚情報の一貫性によって手の所有感覚が変容することを示唆している.本稿では,このようなラバーハンド錯覚に関する研究の最近の進展を紹介する.一つは手の所有感覚の生起条件について,もう一つは錯覚による身体所有感覚の変容が手の感覚情報処理に及ぼす影響について,検討したものである.最後に,ラバーハンド錯覚を通じて,手の身体所有感覚がある種の統合的認知に基づいて形成されることの意味について議論を行う.
著者
廣瀬 通孝
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.71-74, 2007 (Released:2008-07-04)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2 4

「五感情報通信技術」とは,これまで視覚や聴覚に限定されていたコンピュータ・インタフェースをそれ以外の感覚にも拡大すること,五感の感じた情報をコンピュータが取得,処理,表示すること,などを目指した技術である.感覚というキーワードをコンピュータ技術に取り込み,さらに新しい領域を発展させていこうという目的を持つ,新世紀の技術であるといってよいだろう.本稿では VR技術を中心に,五感情報技術の現状とその周辺の話題について紹介する.
著者
公文 誠
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.243-249, 2009 (Released:2016-04-19)
参考文献数
26

本稿では耳介を利用して音源方向を推定する方法について述べる.耳介は音刺激に対して音源方位に応じてその特性が変化するフィルタとして捉えることができるので,受聴音の周波数成分を調べることで音源方向の推定が可能であると考えられている.本稿では,この考えにたって簡単な形状の耳介を有するロボット頭部において,音源の方向を推定し,推定した情報を用いて頭部を音源方向に向ける方法について考察する.
著者
後藤 仁敏
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.157-162, 1997-11-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1
著者
前田 太郎 安藤 英由樹 渡邊 淳司 杉本 麻樹
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.82-89, 2007 (Released:2008-07-04)
参考文献数
19
被引用文献数
4 2

両耳後に装着された電極を介する前庭器官への電気刺激 (Galvanic Vestibular Stimulation,以下 GVS)は装着者にバーチャルな加速度感を生じさせることが出来る.この刺激は従来メニエル氏病などのめまい疾患の原因部位特定に際して前庭機能の異常を検出する方法としての caloric testに代わる手法として用いられてきた.本解説ではこの刺激を感覚インタフェースとして能動的に利用する工学的手法について論じる.
著者
古屋 晋一
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.168-175, 2011 (Released:2016-04-15)
参考文献数
41
被引用文献数
1

楽器演奏者は,反復性の高い動作を,長時間に渡って行うことが求められる.そのため,演奏時の筋肉の疲労によるパ フォーマンスの低下や,楽器演奏による身体の故障発症といった問題は,古今東西を問わず,多くの演奏者を悩ませてきた.これらの問題と密接に関係する,演奏時の筋収縮についての理解を深めることは,楽器演奏者が生涯に渡り,健やかな演奏活動を行う上で不可欠である.本稿では,楽器演奏のパフォーマンスを阻害しうる筋収縮を引き起こす要因について,バイオメカニクスおよびモーターコントロールの観点から概説する.
著者
森田 寿郎
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.200-204, 2006 (Released:2008-06-10)
参考文献数
11
被引用文献数
8 4

空間内で姿勢変化する多関節リンク機構について,関節の自重トルクを完全に補償する機構の設計原理および動作支援技術への応用方法を解説した.その要点は,平行リンクを用いた姿勢変化と自重トルクの非干渉化,ばねを用いた正確な自重補償トルクの発生,3軸が直交する関節モジュールの設計方法から成っている.機構の応用事例として,4自由度垂直多関節マニピュレータとトルク補償型肩装具の構成方法と評価結果を紹介した.自重補償を備えたマニピュレータが先端リンク姿勢に依存せずに正確な補償トルクを発生できること,従来型マニピュレータと比較して,可搬重量,最大速度,最大加速度の全てにおいて高い性能が得られることを示した.装具については,日常生活動作に必要な可動域を満たしていること,挙上動作時の三頭筋・僧帽筋の活動が有意に減少すること,肘の自由な運動を損なわずに食事動作を補助できることを示した.
著者
門間 陽樹
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.47-52, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

本解説では,人を対象とする研究について,いわゆるN = 1 研究から集団を対象とする疫学研究までの方法論的連続性を考えながら,N = 1 研究の“N”の可変性について言及する.次に,疫学研究において,エビデンスレベルが最も高いとされるランダム化比較試験の限界に触れ,ランダム化比較試験の研究デザインと比較しながら,医学分野や行動科学分野で発展してきた単一の対象者に実施するN-of-1 試験の概要について解説する.その後,N-of-1 試験に関するこれまでの歴史を簡単に紹介し,今後予想される展開について述べる.最後に,集団を対象とする疫学研究と1 人の対象者を対象とするN-of-1 試験を比較しながら,両者の関係性について考察する.
著者
北堂 真子
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.194-198, 2005 (Released:2007-10-23)
参考文献数
21
被引用文献数
7 2

日常生活においてストレスを強く感じていたり興奮状態にある場合には,相対的に寝つきにくくなったり睡眠中に中途覚醒を生じたり,翌朝起きにくくなったりすることを誰しも経験している.また,寒暑感や騒音,明るさなどが原因となって睡眠が妨げられる場合もある.本稿では,ストレス負荷状態や興奮状態にある場合とそうでない場合についての生理反応および入眠経過の違いと,スムーズな入眠のための就寝前の準備について解説するとともに,睡眠環境因子の中でもとりわけ大きな影響を及ぼすと考えられる光・照明をとりあげて,生体への作用の解説と上手な活用方法についての紹介を行う.
著者
福井 勉
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.153-158, 2000-08-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
12
被引用文献数
4 3

大腰筋は姿勢や動作に大きく関与する筋である.その長さとともに,身体における位置が非常に特異的である.身体重心位置を大きく覆っているだけでなく,身体重心高位となる骨盤には付着していない.そのため上半身と下半身に身体を分割して考えるとその間を結ぶ蝶番の機能を持つように見える.股関節制御は身体重心を移動させまいとする姿勢反応である.通常,体幹筋と大腿筋がこの制御に関係するが,大腰筋が本制御の核となっている可能性が高い.本筋筋力低下恵者に大腹筋をトレーニングすることによって身体バランスが改善する.大腰筋機能は[1]股関節制御能力,[2]股関節と腰椎の分離運動能力に集約されるのではないかと考える.
著者
板谷 厚
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.197-203, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
29
被引用文献数
2 1

ヒトの姿勢制御にかかわる感覚入力は,主に視覚,前庭感覚および体性感覚の3 つである.これらの感覚入力が中枢神経系で統合され,姿勢制御に利用される.これらの感覚入力は感覚統合において平等ではなく,また,それぞれの感覚入力に対する重みづけには個人差がある.感覚入力の重みづけは環境,疾病や身体活動に応じて変化するとされる.これはsensory reweighting hypothesis(感覚入力の再重みづけ仮説)と呼ばれ,近年,研究が進められている.スポーツ活動の非日常性によって,姿勢制御における感覚入力の再重みづけが促されることが知られている.今後,感覚入力の再重みづけをスポーツトレーニングやリハビリテーションなどの臨床に応用することが期待される.
著者
大藪 泰
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.3-8, 2005 (Released:2007-02-23)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

人間の赤ちゃんは誕生直後から模倣を行う.この模倣行動の発達を,学習論の立場から「道具的学習論」と「連合学習論」に触れ,認知論の立場から「ピアジェの模倣論」を紹介する.「新生児模倣」の発見により,赤ちゃんの模倣行動は生得的な発現メカニズムを基盤にすることが想定されるようになった.人間の模倣行動の発達は,身体形態の模倣が巧緻化するだけではない.それは意図形態の模倣の発現をもたらし,心による同型的な世界の共有関係の高次化を目指している.本稿では,赤ちゃんの模倣行動の発達を「原初模倣」,「自己模倣」,「形態模倣」,「意図模倣」という観点から論じる.