174 170 170 10 OA 女性の睡眠とホルモン

著者
渋井 佳代
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.205-209, 2005 (Released:2007-10-23)
参考文献数
23
被引用文献数
2

女性は,月経,妊娠・出産,閉経を通して,視床下部-下垂体-卵巣系の内分泌環境が大きく変動する.それに伴い,気分の変調や睡眠が変化することはよく知られている.月経前には,いらいら,抑うつ感を伴った日中の眠気の増加が特徴的である.妊娠中に関しては,妊娠前期に過眠がみられるが,妊娠中期には比較的安定し,妊娠後期に夜間不眠が多く経験される.睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群が発症する場合もある.産褥期には夜間睡眠の分断化が余儀なくされる.更年期には,ほてりやのぼせなど自律神経症状がきっかけとなる夜間不眠がみられる.それぞれのライフステージにおけるホルモン動態を正しく理解し,適切な対処をする必要がある.
著者
杉田 昭栄
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.143-149, 2007 (Released:2008-08-31)
参考文献数
24
被引用文献数
4 1

鳥類は,視覚が発達した動物である.彼らは,すみやかに遠くに焦点を合わせることも,近くのものに焦点を合わせることも自由に行なえる.また,色の弁別能力も高い.このように視覚に優れる仕掛けは眼球のつくりにある.その優れた視力は,水晶体および角膜の形を変え,高度にレンズ機能を調節することにより行なう.このために,哺乳類とは異なるレンズ系を調節する毛様体の特殊な発達や哺乳類には無い網膜櫛もみられる.また,網膜の視細胞には光波長を精度高く選別する油球を備えているばかりでなく,各波長に反応する視物質の種類がヒトのそれより多い.したがって,ヒトが見ることのできない紫外線域の光波長を感受することもできる.さらには,この視細胞から情報を受けて脳に送る神経節細胞もヒトの数倍の数を有する鳥類が多い.このような仕組が鳥類の高次の視覚を形成している.
著者
廣瀬 通孝
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.71-74, 2007 (Released:2008-07-04)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1 4

「五感情報通信技術」とは,これまで視覚や聴覚に限定されていたコンピュータ・インタフェースをそれ以外の感覚にも拡大すること,五感の感じた情報をコンピュータが取得,処理,表示すること,などを目指した技術である.感覚というキーワードをコンピュータ技術に取り込み,さらに新しい領域を発展させていこうという目的を持つ,新世紀の技術であるといってよいだろう.本稿では VR技術を中心に,五感情報技術の現状とその周辺の話題について紹介する.
著者
前田 太郎 安藤 英由樹 渡邊 淳司 杉本 麻樹
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.82-89, 2007 (Released:2008-07-04)
参考文献数
19
被引用文献数
3

両耳後に装着された電極を介する前庭器官への電気刺激 (Galvanic Vestibular Stimulation,以下 GVS)は装着者にバーチャルな加速度感を生じさせることが出来る.この刺激は従来メニエル氏病などのめまい疾患の原因部位特定に際して前庭機能の異常を検出する方法としての caloric testに代わる手法として用いられてきた.本解説ではこの刺激を感覚インタフェースとして能動的に利用する工学的手法について論じる.
著者
森田 寿郎
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.200-204, 2006 (Released:2008-06-10)
参考文献数
11
被引用文献数
8 4

空間内で姿勢変化する多関節リンク機構について,関節の自重トルクを完全に補償する機構の設計原理および動作支援技術への応用方法を解説した.その要点は,平行リンクを用いた姿勢変化と自重トルクの非干渉化,ばねを用いた正確な自重補償トルクの発生,3軸が直交する関節モジュールの設計方法から成っている.機構の応用事例として,4自由度垂直多関節マニピュレータとトルク補償型肩装具の構成方法と評価結果を紹介した.自重補償を備えたマニピュレータが先端リンク姿勢に依存せずに正確な補償トルクを発生できること,従来型マニピュレータと比較して,可搬重量,最大速度,最大加速度の全てにおいて高い性能が得られることを示した.装具については,日常生活動作に必要な可動域を満たしていること,挙上動作時の三頭筋・僧帽筋の活動が有意に減少すること,肘の自由な運動を損なわずに食事動作を補助できることを示した.
著者
金谷 翔子 横澤 一彦
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.69-74, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
11

自分の身体やその一部が自分のものであるという感覚のことを,身体所有感覚と呼ぶ.この感覚がどのようにして生じ るのかを調べることは非常に困難と考えられていたが,近年,ラバーハンド錯覚と呼ばれる現象の発見により,手の所有感覚の生起機序について多くの知見が得られた.この錯覚は,視覚的に隠された自分の手と,目の前に置かれたゴム製の手が同時に繰り返し触られることにより,次第にゴム製の手が自分の手であるかのような感覚が生じるというものであり,視覚情報と触覚情報の一貫性によって手の所有感覚が変容することを示唆している.本稿では,このようなラバーハンド錯覚に関する研究の最近の進展を紹介する.一つは手の所有感覚の生起条件について,もう一つは錯覚による身体所有感覚の変容が手の感覚情報処理に及ぼす影響について,検討したものである.最後に,ラバーハンド錯覚を通じて,手の身体所有感覚がある種の統合的認知に基づいて形成されることの意味について議論を行う.
著者
庄司 道彦 王 志東 高橋 隆行 中野 栄二
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.36-42, 2001
被引用文献数
1 5

不整地環境で二脚ロボットに継続的な作業を行わせるためには佇立能力の向上が不可欠である.奉研究では,非平坦面でも静定接地できる足底3点支持構造と,開脚時に支持多角形面積を大きく保つ効果のある,足関節の斜行ロール軸を提案する.
著者
大藪 泰
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.3-8, 2005 (Released:2007-02-23)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

人間の赤ちゃんは誕生直後から模倣を行う.この模倣行動の発達を,学習論の立場から「道具的学習論」と「連合学習論」に触れ,認知論の立場から「ピアジェの模倣論」を紹介する.「新生児模倣」の発見により,赤ちゃんの模倣行動は生得的な発現メカニズムを基盤にすることが想定されるようになった.人間の模倣行動の発達は,身体形態の模倣が巧緻化するだけではない.それは意図形態の模倣の発現をもたらし,心による同型的な世界の共有関係の高次化を目指している.本稿では,赤ちゃんの模倣行動の発達を「原初模倣」,「自己模倣」,「形態模倣」,「意図模倣」という観点から論じる.
著者
渋谷 恒司 深津 紘志 小松 重紀
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.146-154, 2004 (Released:2006-10-06)
参考文献数
10
被引用文献数
3

本研究では,感性情報である音色が,人間の身体運動に直接与える影響を明らかにすることを目的としている.このため,2名の職業演奏家に,28種類の音色を指定し,それぞれのイメージで演奏してもらった.そして,その際の右腕動作,弓圧等を計測し,分析を行った.同程度の弓圧,弓速となる音色表現語の演奏動作と,音色に対するイメージを分析し,音色のイメージと演奏動作について,「イメージが同じで演奏動作も同じ」「イメージが異なり演奏動作は同じ」「イメージが異なり演奏動作も異なる」の3種類に分類した.しかしながら,考察の結果,音色表現語の右腕動作への影響は限定的なものであり,感性は弓圧や弓速などの演奏パラメータ決定に影響を与えるものと結論づけた.
著者
関 和彦
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.81-86, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
9

本稿では中枢神経系による手の感覚受容や運動制御のメカニズムについて,著者らの研究成果を紹介しながら解説する.実験はヒトと手の筋骨格構造が近似しているマカクサルを用い,サルに把握や手首運動を訓練した後,神経生理学的な手法で大脳皮質や脊髄の神経細胞の活動を直接記録する方法を用いて行った.その結果,脊髄にある介在神経が把握運動時に使われる指の組み合わせで用いられる筋をまとめて興奮させている事が分かった.また,運動時の末梢感覚は単に受動的な信号でなく,大脳皮質などからの運動指令によって積極的に調節されており,それが感覚情報処理の初期段階でシナプス前抑制を用いて行われている事が分かった.
著者
後藤 仁敏
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.157-162, 1997-11-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1
著者
高梨 琢磨 中野 亮
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.130-133, 2007 (Released:2008-08-31)
参考文献数
25

ガ類において聴覚は,コウモリによる捕食の回避や種内の音響交信をおこなう上で重要である.大部分の種は,ヒトが感知できない超音波に対して,感受性のある鼓膜器官を聴覚受容器として持つ.本稿では,ガ類における聴覚系の特性を,鼓膜器官の構造・機能及びそれらの多様性について解説する.聴覚が司るガ類のユニークな行動である,コウモリの発する「死」の超音波からの回避と,「愛」の超音波による種内交信について,生理・生態から進化的背景までの知見を解説する.
著者
荻原 直道
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.193-199, 2014 (Released:2016-04-16)
参考文献数
35

生得的に四足性である霊長類の二足歩行運動を分析し,そこからヒトの二足歩行運動の力学的特徴を対比的に明らかにすることは,ヒトの直立二足歩行の起源と進化を考える上で多くの重要な示唆を提供する.本稿では,我々が進めてきたニホンザル二足歩行の比較運動学・動力学的分析から明らかになってきた,ニホンザルとヒトの二足歩行メカニズムの違いについて概説する.また,どのような筋骨格系の構造改変がヒトの直立二足歩行の進化に重要であったのかを構成論的に検証するために,ニホンザル筋骨格モデルに基づく二足歩行シミュレーション研究も進めている.本稿ではこれらニホンザル二足歩行研究から,ヒトの直立二足歩行の進化に迫る試みについて紹介する.
著者
北堂 真子
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.194-198, 2005 (Released:2007-10-23)
参考文献数
21
被引用文献数
7 2

日常生活においてストレスを強く感じていたり興奮状態にある場合には,相対的に寝つきにくくなったり睡眠中に中途覚醒を生じたり,翌朝起きにくくなったりすることを誰しも経験している.また,寒暑感や騒音,明るさなどが原因となって睡眠が妨げられる場合もある.本稿では,ストレス負荷状態や興奮状態にある場合とそうでない場合についての生理反応および入眠経過の違いと,スムーズな入眠のための就寝前の準備について解説するとともに,睡眠環境因子の中でもとりわけ大きな影響を及ぼすと考えられる光・照明をとりあげて,生体への作用の解説と上手な活用方法についての紹介を行う.
著者
青村 茂
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.212-218, 2012 (Released:2016-04-15)
参考文献数
12

人間が頭部に衝撃を受けると局在性脳損傷,或は脳震盪やびまん性軸索損傷(DAI)等を発症する.局在性脳損傷は脳表面の局部的なひずみや急激な圧力変動により引き起こされ,DAI 等は脳内の広範囲に発生するせん断応力やひずみが原因である.これらは脳の活動に重大な影響を及ぼし,時には死に至ることもある.衝撃と一口に言っても転倒や転落,凶器や拳での殴打から交通事故やスポーツ中の事故など様々で,衝撃時の微妙な状況の違いで実に様々な症状を呈するが,その因果関係は力学的に説明されるべきことである.本解説では,人間の最も重要な部位である頭部が衝撃を受けた際に頭蓋内で何が起こり,その結果どのような症状が発症するのかそのメカニズムを,数値計算や細胞実験をもとに実際の事故の症例の検証もまじえながら力学的観点から解説する.それらを元に,さらに,現在の最先端の研究を紹介し今後の発展についても言及する.
著者
住谷 昌彦
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.93-100, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
49

四肢切断後に現れる幻肢痛をはじめとする神経障害性疼痛の発症には末梢神経系と脊髄での神経系の異常興奮とその可塑性に加え,大脳を中心とした中枢神経系の可塑性が関与していることが最近の脳機能画像研究から確立しつつある.幻肢の随意運動の中枢神経系における制御機構をもとに,我々が行っている鏡を用いて幻肢の随意運動を獲得させることによる臨床治療(鏡療法)についてその有効性と限界,そして今後の幻肢痛および神経障害性疼痛に対する新規神経リハビリテーション治療の可能性について概説する.
著者
村井 正
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.5-9, 2001

1961年人類初の宇宙飛行が実現してから40年が経過した.SF映画「2001年宇宙の旅」が公開されたのは1968年のことであり,映画の中で描かれた宇宙での活動は,2001年を迎えた現在,大半は未だ実現していない.しかし過去40年間の有人宇宙開発の進歩は着実なものであり,現在日本も参加して国際宇宙ステーションが建設中である.数年以内に日本人宇宙飛行士による宇宙ステーション常駐が開始される見込みとなっている.本稿では,過去40年間の有人宇宙開発の歴史を概観し,今後の方向性について論じた.
著者
谷島 一嘉
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.10-13, 2001

建設中の国際宇宙ステーションから2014年ごろの火星有人飛行において,長期無重力暴露に起因する循環や骨筋肉系の退化,カルシウム喪失が大きな問題になる.現在の対策ではなお十分でなく,人工重力のみがこれらを網羅できる対策であると,19世紀から考えられているものの,地上での実験と有効性の検証が遅れている.人工重力研究の国際的WGは1990年頃始まったが,我々は将来の重要性を見越して当初から独自の小型短腕遠心機を開発して研究を続けていた.無重力暴露のの地上模擬実験である6度ヘッドダウン臥床を4日間行い,世界で研究者が抑えきれなかったヘマトクリット値の上昇を,毎日+2Gz-60分の遠心負荷をかけて,初めて抑えることが出来た.遠心負荷の有効性を改めて示し,宇宙で試されるべき人工重力の一つの有力なパラメータを提供した.
著者
田村 博
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.112-116, 2004-08-01
被引用文献数
6

キーボードは書字下手な人々の悩みを解消した.そしてケータイは,移動中でも,ベットの中でも時や場所を選ばずに使える入力法を約束している.機械に合わせて人を訓練するのでなく,人に合わせた入力法の開発が格段の普及を促進するものと期待される.書字動作,キー入力,ケータイ入力に共通する人の特性についてのべ,最近の実験結果を含めて解説する.