著者
山住 勝広 龍崎 忠 島田 希
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
日本教育学会大會研究発表要項
巻号頁・発行日
vol.62, 2003-08-20

ポスト産業主義への激烈な社会変化は産業化の時代に確立した教育と学習の社会システムの根本的な見直しをせまっている。ヴィゴツキーとデューイは、共に近代化の激動期にあって、その後に支配的になっていった教育と学習の組織形態とはちがった構想を練り上げた。あまり知られてはいないが、ヴィゴツキーの学習と発達の理論は見事に20世紀初頭の新教育運動に呼応している。それはデューイの新しい学校の構想、すなわち'an embryonic typical community life'ととての学校のヴィジョンと完全に共振する。両者は、その後の大量生産型教育システムとはまったくちがった学校モデルを私たちに提起しているが、それはポストモダン的な価値多元論や脱構築主義とも一線を画している。むしろ二人は、諸個人の社会的知性がそこにおいて成長し、かつ逆にその社会的知性がつくりだしていく新しいコミュニティとして、学校の社会統合的な可能性を称揚する。私たちは、いまこそヴィゴツキーでありデューイであるとの考えから、諸個人の自立的連帯をキーとするカリキュラムと教育方法の活動理論的研究を展望することにしたい。